愛しき我が家の(廃)神様!

あざね

プロローグ その出会い方は独特で……

 人の持つ『えん』というのは、不思議なものだ。

 袖触れ合うもう他生の縁、という言葉もあるように、人生は様々な『縁』で出来ている。


【★GOD★】:うぃ~ 乙~

【YUI】:あ、神さん。乙です~


 だから、こういったネット上の出会いもある種の『縁』なのだろう。


【★GOD★】:なぁ。一つお願いがあるんだけど、聞いてもらえるか?

【YUI】:? どうかされたんですか? 珍しいですね。

【★GOD★】:……じつは、さ。家出したくて、匿ってほしいんだよ。

【YUI】:え? 私の家に、ですか? 何があったんですか?

【★GOD★】:理由は言えないんだ。すまない。本当にすまない……。


 そしてその中には、思いもよらない事態を招く『縁』だってあるだろう。面倒なことは、極力避けたいものだ――が、そんなの前もって知り得るわけがなくて。


【★GOD★】:頼む! お前だけが頼りなんだ!!

【YUI】:すみません。少しだけ時間ください。さすがに考えないと……。

【YUI】:……分かりました。数日だけなら、いいですよ。神さん。

【YUI】:じゃあ、どこかお互いに分かる場所で待ち合わせしましょう。


 だから俺は――


【YUI】:あれ? 神さん?? どうされたんですか?



 ――この時。目の前で何が起こったのか、まるで理解が出来なかった。



「え? 何だよ、これ……」


 ぞわり、と。全身に鳥肌が立つ。

 先ほどまではオンラインゲームの様子が表示されていたノートパソコンの画面。そこには今、ノイズ音と共に今は懐かしきアナログな砂嵐が表示されていた。


 そして――


「ひぃっ……!」


 ――バツン! という破裂音がしたと思えば、暗転。

 さらに、次いで起きたあることが俺をパニックに陥らせた。


「えっと。このゲームって、VRに対応とかしてたっけ…………?」


 何も表示されていなかったディスプレイからは――華奢な女性の腕。それが必死に、狭い枠の中から這い出ようともがき苦しんでいた。そして、続いて見えたのは枝毛だらけの黒髪をした頭部。

 そこに至って、やっと俺は現実に目を向けることが出来た。


「……って、そんなわけねーよ! これって、もしかして――」


 ――来ちゃうヤツ? きっと、来ちゃうヤツ!?


 ……とは言っても、混乱はここまで極まっていたらしく。また決して良くはない頭では、そんな間の抜けた言葉しか出てこなかった。むしろ、口がきけるだけマシなのかもしれなかったが、目は完全に背けてしまっている状態。


 だが、そこに――全く予想外のラストパンチが繰り出された。


「む!? 儂のことを呪いの拡散をするアレみたいに言いおって。失礼な!」


 口に出ていたらしい言葉に反応して、返事があった――画面の方から。

 それは、ふっと気の抜けてしまうようなもので。


「えっ? あっ――」


 最後の最後。


 声のした方へと目を向けた時。




 ――……唯一の砦だった言葉ですら、俺は失ってしまった。


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