21 水着って人の性格が分かるらしいけど、妹だけよくわかんないヨネ!
じりじりと砂浜を焦がす太陽。サマービーチである。
BBQセットもオッケー。肉と野菜を交互に刺して、主菜も準備万端。あとは、結花たちが来るのを待っているのだが、
「全然来ねえ…」
今どきの女子は着替えがやたら遅いとは聞いていたが、まさかここまでだったとは。
無慈悲に聞こえる波の音と、後ろの山々から忙しなく鳴き続ける蝉時雨。俺は海水で濡らしたTシャツを首元に巻き、時折頬を伝う汗を拭いため息をついた。タオル忘れたからね!しょうがないね!
「なんでこんなに暑いのか。いや、暑さはおそらく残業をしている会社員たちのせいだ。クーラー効かせて、PCの熱で暑いんだ。そう考えるとなんだか可哀想になってきた。うん。この話はもうやめよう」
あまりに闇の深い独り言だったので打ち切り、火の場を少し離れた時だった。
「おにーちゃーん!!」
ザンっ!と砂をける音ともに、俺の頭上が暗くなる。影の正体を見ようと上を見上げた瞬間、俺は見た。
真夏の太陽の逆光を浴びた黒い人影。それはまさしく夏を満喫する、サマーモンスター!!そしてその正体は!
「だいしゅきホーーーーールドッ!!」
その掛け声とともに俺の背中に鈍い衝撃が走るっ!ホールド?何言ってんのかさっぱりだ。これは正真正銘のドロップキック!決してホールド術では、ない!
「ぐっ、えぁ!?」
俺は盛大に倒され、熱々の砂浜に顔面を埋めることとなった。
「さぁ!可愛い可愛い妹の水着姿を可愛がれーーー!!」
テンションたっかいな。俺は今のだいしゅきホールド(?)でお腹いっぱいだから。家でされるのも大概痛いが、狭い分手加減されていたのだろう。広い場所のだいしゅきホールド(?)は威力増大、効果は抜群だ。
「痛てぇから!!何するの!?お兄ちゃん痛かったんだけど!?」
「許して、あげて…」
後から塔ヶ崎先輩と古海が来ていて、塔ヶ崎先輩が結花を庇う。
「結花ちゃんの…夏の、魔物が、目を覚ましたの」
もはや彼女たちとは分かり合えない。ため息をつきつつ体についた砂を払う。
「まぁいいや。で、だいぶ遅かったな。俺すごい暑かったんだけど」
「うわぁ!BBQだぁ!」
うん。はしゃぐのいいけど、結花はもう少し話聞いて。
「水着選ぶのに時間がかかったのよ」
古海がそういい、塔ヶ崎先輩もうんうんと頷く。選ぶのに時間かかるのか。女子は大変なものだ。
「そ、それより」
「んあ?」
「水着の感想とかないのかしら」
そうか。水着だったな。しかし、感想と言われても。
古海は黒のシンプルなビキニ。華奢な体躯かつ色白肌なので、黒いビキニがとても良く映える。クールな風貌からなのか、年上に見てしまう。
塔ヶ崎先輩は桃色のワンピース水着である。小さめな体格にスカートや胸元のフリルが可愛い。傍から見ると幼女に見えなくもない。どこはかとなく犯罪臭が…。
結花は、
「え、なんでスク水なの」
スクール水着だった。胸が大きい分、ボディラインがきっちりとメリハリをつけている。我が唯一無二の妹ながら、恐ろしいダイナマイトボディだ。しかし、普通のビキニの方がよかった可能性が。
「お兄ちゃんは拗れた性癖持ちだもんね!」
「古海と塔ヶ崎先輩はすげぇ似合ってるけど!お前だけ場違い感半端ないから!」
あと、スク水好きだけどそこまでヴィレッジヴィレッジしないから。しないから!
「なんかもうどっと疲れた。ほら、もう網も温まってるから、肉焼くぞ」
古海と塔ヶ崎先輩が頬を朱に染め、もじもじとしていた。照れてるな。いつも結花を褒めたり可愛がったりしてるから、その要領でやったのだが、そんな反応されると俺も照れるんですけど。
「うははーい!!おっにく~おっにく~」
唯一無二の妹は兄に褒められることより、お肉に興味があるようです。悲しいね!
「おいっ!野菜も食えよ!ほれ、そこ二人も立ってないで座った座った。どんどん焼くぞー!」
照れと暑さを凌ぐため、俺はこのあと1時間半ほど肉を焼き続けたのだった。いや、結花があんなに食べるなんて思ってませんでしたからね。
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