9 クラスの委員会って大概は押し付け合いで決まるヨネ!!
出場種目も決まり残すは体育実行委員だけどなった。運動部は強制的に手伝わされるが、文化部や帰宅部はこうして決めなければならない。のだが、
「体育祭実行委員は古海さんと川端に決まりました」
そう言ってクラスの委員長は席に戻っていく。
初めに。まず何で俺だけ呼び捨てにされたのん?恨みでも持ってる?まさか地獄な少女に藁人形とか貰ってないよね?次にこの状況。え?俺そんなの了承した覚えがないんだけど。
「え、なになに。俺なんかしたのか」
この声は恐らく周囲には聞こえていないだろう。LHRで体育祭実行委員決めをすると言うから暇だったので寝ていたのだ。そしてふと起きてみればこれである。
これで一件落着と言わんばかりにクラスはお喋りの喧騒に包まれる。
唖然としている俺の前にすたすたとやってきたのは古海だった。
「良かったわね」
ムスッとした顔で俺の前で立っていた。プラスアルファで俺を睨みながら。
「君と私が仲がいいからと言う理由で押し付けられたわ」
「えー…」
最近のリア充えげつないことしてくるな。しかもそれを悪いことと認識してないのが余計にタチが悪い。
「全く。でもまぁ、今日の放課後に会議室に集まれって言ってたわね」
「ああ、帰りたかった…」
「そんな顔しないで。辛気臭くてたまったものじゃないの」
「お前はもう少し同じ境遇に嘆けよ」
俺の小言はお喋りの喧騒で飲み込まれた。
→→→
帰りのHRが終わり俺は走早に教室を出る。その後ろを古海がついてくる。鴨の親子を連想させるそれは奇妙な感じがあった。
「なぁ」
「何かしら」
「バックれていい?」
「いい訳ないでしょう?」
「そーですよねー」
足にのしかかるような倦怠感。それを振りほどくように一歩一歩慎重に歩く。どうも俺の脳は会議室に行きたくないと思っているらしい。足にのしかかる倦怠感が先程より一層重みが増えている。
そして俺の目には会議室と書かれた札が見える。
「着いてしまったか」
絶望に打ちひしがれる俺の背を古海が無理やり押す。ハイハイ分かってますってば。
いやいや扉を開けると、教室内の視線が扉に注目する。しかし目当ての友人や知人ではないと分かるや、重いため息が一つ二つ、吐く音が聞こえる。おいやめろ。露骨にテメェ見てぇなリア充なりそこないのクソぼっちには興味無いんだよみたいな目で見るな。
見渡すと3年の座る席に塔ヶ崎先輩がちょこんと座っていた。放課後はブレザーなどの制服を脱いでも構わないため塔ヶ崎先輩はゴスロリの一張羅だった。
「あの変な格好してるのって」
「いや、聞くな」
「でもキラキラした目で君を見てるけど…」
「お願いしますやめてください」
俺はなるべく関わらないようにすべくスルーを決め込もうとしたが、塔ヶ崎先輩は椅子から降りてトトトと俺の元へ駆け寄ってくる。
「後輩君…」
「こんにt」
「こんにちわ」
俺の挨拶を上からかぶせるように古海が塔ヶ崎先輩に挨拶をする。すると塔ヶ崎先輩は体を震えさせ後ろに数歩下がる。
「あ、あなた…。な、何でぇ…」
今にも泣きそうな顔をしている塔ヶ崎先輩を見て俺は察する。きっとなにかされたのだろう。聞きたくはないがここは聞いておくべきなのだろう。
「古海、お前、塔ヶ崎先輩に何したの?」
「別に?頼み事をしたいって頼んでも断ってきたからちょっとだけビビらせてあげたのよ」
「ちょっとでここまで震え上がらねぇよ!」
俺は疑問を解消するため塔ヶ崎先輩を見るが、フルフルと首を横に振るだけだった。
←←←
各々と各クラスの体育祭実行委員が集まり全員が揃う。教室の教卓に熱血教師で有名な倉木が立つ。顔もガタイも厳ついためどうも苦手だ。それなりに貫禄のある性格だし体育以外は穏やかなのでそれほど生徒からは危険視されていないが。
「えー、では第一回体育祭実行委員会を始める」
野太い声が会議室にこだます。そんな声に俺は顔をしかめる。
「まず、実行委員長を決めたいと思う。立候補するやつは手をあげてくれ」
勿論、ここにいる奴らは大半は押し付けられて来ているのだろう。誰ひとりとして手をあげようとしない。
これには流石の倉木も困ったのか、もう1度先ほどと同じ掛け声をする。その程度で上がるとは思えないが。
「ほら、早く決めないと次に行けないぞ。それに体育祭実行委員長になれば内申にも響くぞ」
ああー、それ言っちゃうかー。俺はこめかみに指を添える。
「あれを言ってしまうと逆に誰も委員長になりたがらないわね」
古海も理解しているのか苦虫をかみ潰した顔をする。そんな思い空気の中、
「はいっ!」
元気いっぱいに手を上げていたのは、結花だった。あいついたの!?お兄ちゃん気づかなかったよ!?ていうか普通に話しかけてくれてもいいじゃん!
「おお!川端がやってくれるか!いやあ、助かったよ!早速で悪いが副委員長を決めてくれ。そうでもしないと誰もやってくれそうにないからな」
倉木はにこやかな顔で結花にそういう。
「分かりました!」
俺はその返事を聞いてぞくりと背筋が凍る。いや、あいつを見た時から嫌な予感がするのだ。
「では」
ピシッと指さされる。教室にいる誰もが緊張の面持ちだったからか、空気が少し軽くなる。が、皆が指さす方向には、俺がいた。
「あたしの兄で」
ニコリと笑う顔は悪魔に似たそれを連想させた。
→→→
「ただいまァ」
「ただいまっ!」
俺はあの後前に呼び出されしたくもない自己紹介をしてその場を締めた。帰り際、塔ヶ崎先輩にお茶をしようと誘われたところを結花が睨みつけ見事黙らせる。そして古海には一言耳元で何かをささやき苦い顔をさせていた。我が妹ながら末恐ろしい。
「さあってと」
先に玄関から上がった結花が俺に腕を見せてくる。その腕にはシュシュが付いている。
「あ?なんだよ」
「これね、お兄ちゃんのパンツから作ったんだー」
「ぶっ!?」
おれは思わず吹いてしまう。いや待てと。俺は冷静に自分に突っ込む。まさか、そこまですることはあるはずはない。
「嘘だと思う?ほら、ここにね、お兄ちゃんの見覚えのあるものが書かれてるよね?」
それは確かにパンツについているタグで、そこには親父のパンツと間違えないように下の名前が書かれている。そこに書かれているのは"ユータ"。
「おまっ、それはやり過ぎだろ!?」
「ああん、お兄ちゃん…。そんな大きな声出さないでよぉ。ビックリして(驚いて)ビクビクしちゃうでしょ?」
「おおおい!誤解を招くような言い回しをするなっ!」
そろそろ俺の妹は警察に届けるべきなのだろうか。そんなことをしんみりと考える今日此頃です…(涙。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます