4 妹の胸を触れても嬉しいとか思わないヨネ!?

 トイレでの出来事を古海に話すと、

「やっぱりね」

「やっぱり?お前それ結果わかってたみたいじゃないか」

「ええ。桐片君はいい人だから、人の意思を無視した行動や考えなんて承認しないでしょ」

 意地底の悪いやつだ。しかしまぁ非リア充がリア充に頼み事するって余程ピンチなんだろうなって察してくれないのかね?どうでもいいことは早急に察知するのに。例えばあのクラスの女子がサッカー部の部長に猛アタック仕掛けてるとかね。

「で、他に男のアテはあるのか?」

「見つけたら連絡するわ」

「見つけてないんかーい」

 ポソリと呟いて俺は机に突っ伏した。


 →→→


「ただいまー」

 モヤモヤとする気分を無理やり腹の奥底に押し込め、家に帰る。いつもなら電気の付いていて、結花が俺の元に駆け寄ってドロップキックを食らわしてくるはずなのだが、今日はそれが無かった。

「嫌な予感がする…」

 俺は足音をたてないように階段を上がり、自室へ向かう。見ると扉が少し空いているではないか。

「なぁにしてんだぁ!!」

 半開きの扉を思い切り開ける。

 薄暗い部屋には人影らしきものは見当たらない。俺は警戒しながら部屋に突入する。人の気配はない。

「何だ。学校出る時半開きにしたままだったか」

 俺は一息ついてベッドに倒れ込む。すると

「むぎゅっ…」

 布団から呻き声が聞こえる。そして何やら柔らかいものが掛け布団の中にあるようだ。

 俺は無言で布団を剥ぎ取る。そして剥き出しになったのは我が唯一無二の妹だった。手にはやはり俺のパンツが頑なに握られていた。

「おい」

 俺のジト目を結花はサッと逸らす。

「何?あたしはただお兄ちゃんの匂いのする…じゃなかった。あたしはただお兄ちゃんの布団で寝てただけだよ」

「布団だけなら俺はまだ許していたぞ」

「じゃ、そゆことであたしはここらで失礼しm」

「おう待てや」

 俺は結花の肩をがっしりと掴む。離しません。(パンツを)返すまでは。

「何するの!触らないで!あとパンツは返さないから!」

 涙目になりながら反抗を試みている結花。

「頑固だな?でもお兄ちゃんはなお前のことを思ってだなぁ」

「あたしのことを思ってるならパンツをくれてもいいじゃない」

「それとこれは別だ。大体、俺がお前のパンツを盗るとしよう」

「え、うわ、キモ」

「おい」

 ガチで引いていた。いや普通その反応俺がしたいからな?

「ほら、お前もその反応だろ?俺も同じような態度をとらざるを」

「え?お兄ちゃんはあたしにパンツ盗られて、ありがとうございしゅぅぅぅ!!ブヒぃぃぃぃ!!って思ってるんじゃないの?」

「まさかの家畜ですか!?」

 そんな目で見られているとは思っていなかった。やばい、お兄ちゃんの豆腐メンタルが麻婆豆腐になりそう。

「兎に角!俺のパンツをここで返却すれば許してやる。俺も親にいうとか鬼畜所業はしないから」

「…や」

「え?」

「絶対に嫌!お兄ちゃんのパンツはあたしの物!あたしのパンツもあたしの物!」

 おいそれどこのジャ○アンだよ。国民的アニメのネタを盗むな。パンツみたいに。パンツみたいに!

「じゃあ仕方ない」

 俺はゆらり立ち上がる。その様子に結花はビクッと肩を震わせる。本気で怒ると思っているのだろう。だが俺は別にこの程度で怒鳴ったりはしない。

 お仕置きをするだけだ

「お、お兄ちゃん?」

「……」

「なんで黙るの?ねぇ!?」

「……」

「やぁ…。お兄ちゃん怖いよぉ…」

「……」

「ヒッ…」

 俺の両手が結花の両横腹に添えられる。

「ふぇっ!?」

「ふっひっひっ」

 思わず下品な笑いが俺の口から漏れる。

「な、何するの?ねぇ、何するの!?」

「……」

「怖いから黙らないでよぉ!」

「…の刑だ」

「へ…?」

「くすぐりの刑だ」

 俺はその言葉を発したと同時に、結花の柔らかく温かい横腹に添えた手を縦横無尽に動かす。

「ふひゃっ!?あはっ、あははは、あはははははは!!ちょ、やめ、あははは!やめ、も、や、あはははははは!!あっ、だめっ!あははは、はははははは!!」

「ここかぁ!?ここがいいのかぁ!?」

 柔らかい結花の四肢をまさぐりくすぐり続ける。涙目になりつつも結花は意図しない笑いに体をくねらせている。

 そのままベッドに押し倒し、更に追加のくすぐりを始める。

「ヒッ、はあ、ふやぁっ、あははは、あはははははは!!いや、もう笑いたくな、あはははははは!!」

「さあ!パンツを返せー!」

「やっ!あははは、いひっ!?」

 ケラケラと笑っていた結花の顔が急に赤くなる。

「…?どうした?」

 元々くすぐっていたので顔は少し赤く火照っているが、それとは違うようだ。

「…顔」

 結花には珍しくしおらしい声。気づけば俺と結花の顔の距離は両方の吐息がかかるまで近づいていた。

「近い…」

「…っ!!」

 え、なんで照れてるの?意識すれば余計に恥ずかしいんだけど…。

「あと、手」

「手?」

 俺の右手は横腹から結花の胸に添えられていた。大きさは手から少しはみ出るくらいで丁度いい大きさ。柔らかい。そして温かい。心臓が飛び跳ねるほど鼓動が荒くなる。

「おわぁ!ご、ごめん…」

「うん…」

 俺は瞬時に後ずさる。緊張で目の前がチカチカする。

「じゃあ、あたし戻るね…」

「お、おう」

 バックバックと耳に聞こえるほどの鼓動。

 結花はゆっくり部屋から出ていく。そして心を落ち着け数分後。俺はあることに気づく。

「パンツ、返してもらってない」

 俺は考えてしまう。あのしおらしい態度は実は計算されたもので、くすぐることも予想していて、押し倒されることも予想していたら?手に胸を当てさせていたとしたら?パンツを盗るためにここまでの計算をしていたら?

「そんな訳、ないか」

 ふっとため息をつく。それでも、もしもとは思わずにはいられなかった。

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