12 計画って実際上手くいく試し無いヨネ!
体育祭当日。
「私は知らないわよ」
「何も言うな」
俺と古海は種目表に印刷された文字を見て愕然としていた。なんせ、結花が作った種目『気になる人リレー』たるものがここですよと言わんばかりにラメ入りノリで主張していたからだ。
「これさ、誰が出んの?」
そう。疑問は尽きない。なぜなら種目は決まっていて、LHRでも何もしていないから。 が、その俺の疑問は古海の答えですぐに解ける。
「自由参加。だそうよ」
「へぇ、ご苦労なこった」
俺は口角が嫌に釣り上がるのがわかる。ついでに嫌な汗も吹き出てくる。
「はは、笑えねぇよ」
しかし自由参加と言えど参加者はさして多くないだろう。なんせ、こういった共学校にはルールがあるからだ。それは、テリトリー意識だ。
テリトリー意識とは。簡単に直すと縄張り意識の事である。ここからここまでが自分の領域で踏み込めば殺すぞという何ともまぁおぞましいものだが。特に人間の性別では女性がテリトリー意識を強く意識しやすいのだとか。
女子の間では特定の男に惚れても、先客がいる場合は手を出してはいけない。そんなことを俺はテレビや少女漫画でたんまりと読み聞きしたことがある。
「君も考えることは同じね」
「まぁな。縄張り意識は簡単に超えることなんざ無理だ。てことはここで好きなやつを晒すわけにゃいかねぇ。でもな、そうじゃない奴もいる」
俺の煮え切らない言い回し方に古海は少し苛立ちを見せる。というかガンガンに睨みつけている。
「あー、つまるところ逆に見せつけんだよ。こいつは自分のものだってな。こういうのなんて言うんだっけな。えっと」
「マーキングね」
「そうそれ。だから多分リア充でスクールカーストぶっちぎりの奴らは出るだろうな。片桐あたりのカーストは特に」
ちらと俺は横目で応援で盛り上がっている片桐の徒党を見る。ギャーギャーと煩いが楽しんでいるようだ。
「さて、ここで問題が発生だ」
「ええ」
古海が察しのいいやつで助かった。
「もしこれで君の妹さんが『気になる人リレー』に参加して君を指名した場合、佐原君と付き合わせるというのが困難になる」
「そういう事だ」
「なんとか中止したいけれど…」
種目表を見るが、障害物競走の次に気になる人リレーが入っていてその後に昼休み。そして最後の種目全学年合同騎馬戦だ。
「障害物競走って、もうすぐじゃない」
「まじか。仕方ない、何か策を練ってくれ。俺も障害物競走中に考えとく」
俺は古海にそう言い残し障害物競走組の集合場所に向かうことにした。
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