14 手の内読まれて一杯食わされることってよくあるヨネ…
障害物競走は特に何か盛り上がりもなく終わったので割愛。
まあ?3位取れたからいいと思うんだけどね?ところで何で俺の番になると誰も頑張れの一言もかけてくれないの?ちょっと心が折れそうでした。
「運動音痴のクセしていい走りしてるわね。常に1人なのにそんな足が早くなるわけじゃないでしょう」
古海が俺に話しかける。片手には某ジュース会社のスポーツドリンクを持っている。
「何?これが欲しいの?あげてあげなくもないわ」
「え、いや。自分の分持ってるんだけど」
そういった途端、古海はあからさまに機嫌を悪くする。
ええー。ラスボス感が凄いんですけど。
「私もさっきファンですって貰ったものなの」
ちゃぷちゃぷとボトルを揺らして俺に差し出す。
「飲みきれないから貰いなさい」
貰えと言われてしまうとどうしても受け取ってしまう。これ何でだろうな?というかファンの差し入れ渡しちゃってもいいのかよ。
俺は渋々の体でスポーツドリンクを受け取る。
「で、これからどうするの?」
「それがな。全く打開策がない」
「は?」
まるでこの世のクズは世界の病と言わんばかりの目で見られる。
やめてよぉ!
「ま、まぁ落ち着け。何も全く考えがない訳では無いぞ?」
「そ。じゃあ意見を聞かせてもらおうじゃない」
まるで会社の会議のプレゼンする時のようなプレッシャー。いや、プレゼンしたことないけども。
「俺とお前でこのレースに参加する」
「なるほど。…ふぁ!?」
古海がみるみると頬を赤らめていく。なにを勘違い致してるのだろうか。普段クールなんだからこれもクールに対応して貰いたいのだけども!?こっちまで意識しかねないわ!!
俺は微妙な空気を打ち破るようにまくし立てる。
「いやいや。別にお前じゃなくてもいいから。塔ヶ崎先輩でもいいし!いや待てよ。それならラッキーなのでは!?」
塔ヶ崎先輩の手を引いて、恥ずかしがる彼女を見て俺は青春謳歌。なくしてしまった青春カムバック!!?
「全部声に出てるのだけれど」
おおっと!俺としたことがつい興奮してしまった。心の露呈を隠すように軽く咳払いをする。
「とにかくだ。俺とお前で出場すれば結花は手を出せない。これで何とか乗り気るしかない」
俺としては乗り気ではない。ぼっちは目立つことを良しとしないのだ。目立つと大抵ろくなことにならない。
例えば、バスケをしてるとしよう。迷惑かけないようにゴール下に立っていると味方のパスが飛んでくるわけだ。そんな時に限ってうまくキャッチしてしまい、味方は期待の眼差しを向けてくるのだ。あれ?ひょっとしてこれゴール決めれんじゃね?ふとそんな自信がわいていざシュート。かっこよく着地。さて結果は。無論、いけんじゃね?と思っただけで、入りはしなかった。無性に恥ずかしくなり、お腹痛いから保健室に行ってくると言い残しその場を離れた。
チームのあの憐れみを帯びた視線は今でも忘れる事は出来ない。
「川端君。もう競技始まるわよ」
「あ?ああ」
遠い記憶から今現在に呼び戻された俺は生返事をする。斯くして俺はリア充に混じって競技に挑むのだった。
→→→
一言でいうと、結花は競技に参加すらしていなかった。代わりに佐原が別の女の子と走っているのが見えた。
どうやら結花は佐原に何かしらの干渉をしていたようだ。我が妹ながら恐ろしい。考えることが殆ど俺と同じだ。
「してやられたってところかしら」
古海は溜息を吐きながら、塔ヶ崎先輩と走っていた。これで暫くは古海が百合だという噂が流れそうだ。
え?何で俺は競技に出場していないのか?その理由は、塔ヶ崎先輩が古海との親睦を深めたいからだそう。目立ちたくなかった俺にとっては何ともありがたい申し出だったので快諾したわけだ。
そして気になる人リレーが終わると同時に大雨が降り、午後の部の競技が全て中止になった。
「結局、全部骨折り損のくたびれ儲けだったか…」
妹に一杯食わされ、悔しさよりも呆れが勝った。
勿論、『お兄ちゃん離れ強化年間~ラブズッキュン命短し恋せよ乙女!!~』作戦は失敗だ。また俺のパンツが犠牲になる…。
そうさせないためにも俺は次の作戦を考えるのだった。
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