10 最近体育祭がマンネリ化してるからって無闇に変な競技作るとめちゃくちゃになるヨネ!
体育実行委員会からはや数日。未だパンツの消失が絶えない中、それは起こった。
「聞いた?」
いつもの昼休み。空気の如く本を読んでいた俺は、古海から声をかけられる。顔が地味に近い。本来ならここで、トゥンクとかやった方がいいのだろうがどうも俺はときめかないみたいだ。
「あ?何が」
「君の妹さん、体育祭で新しい種目を作ったそうよ」
「え、何それ俺聞いてない」
一応副実行委員長なんだけどなぁ?よくある事だから良いけど。
ほら、グループで組んでたはずなのに途中からなんかハブられて発表する時すごく肩身が狭い思いをするってあったじゃん?え?俺だけ?はっはっは。そんな事ねぇよ!懇願してるけど!仲間欲しい!
いやまぁ、そんなぼっち自慢話とかする仲は欲しくないな。冷静になった俺は最強。
「それはそうよね。だって、あなたに言うのは酷だから」
「そんなこと」
「気になる人リレー」
「は?」
俺の返事に古海は溜息をつきつつもう一度いう。
「だから、気になる人リレー。気になっている人と一緒に走るリレーだそうよ。バトンをもらった人は応援席から気になる人の手を引いて走る。単純明快に言ってしまえば借り物リレーの人版みたいなものね」
「わぁ。詳しいんだなー」
俺は妹に何の連絡も受けず、古海は知っている。確かにお兄ちゃん離れしてほしいとは思ってはおりますけどね?流石に傷つくわー。
俺の死んだ目がさらに死んでいるのを見てなのか、古海はフォローを入れる。
「だ、大丈夫よ!ほら、君だって、その、あれじゃない!えーと」
目に見え見えのフォローは痛いので辞めてもらえませんかね?遠まわしにdisってるのん?
「と、とにかく!やっぱりこういうのは良くないわ」
「いや、普通に彼女彼氏持ってる奴らはどうでもいいだろ。それに非リア充が反対するに決まってる」
「いいえ。支持率はかなり高いわ」
「なんでそんなこと分かるんだよ」
「昨日アンケートしたの忘れた?」
あー、したようなしてないような。あるぇ?あ、昨日はアンケート適当に答えて寝てたわ。内容はさっぱり。あーさっぱりさっぱりさっぱりなー!とかいいながら小人が走ってきそうだ。
「はぁ。そのアンケートは君の妹さんと私で集計したのよ」
「その仕事って俺がやるべきなんじゃ?」
「君は昨日颯爽と帰っていったでしょう?」
ほとほとうんざりした顔で古海はいう。ああ、呼び出されてたのか。いやぁ、だから昨日結花がぷりぷり怒ってたのか。可愛かったので結果オーライだ!
「で、結果は高評価。君みたいなぼっちはそんなにいないわ。仮にボッチであっても選択的ボッチではないのよ」
「なあ。ナチュラルに俺は選択的ボッチだとか思うのやめてくれない?」
「あら、じゃあ君はああやって周囲に羞恥をばらまけるほどの精神があるの?」
「あー、砕け散るな。俺の豆腐メンタルが絞られておからになるな」
例えばだ。夏祭りなどでみんながドンちゃん大騒ぎしてるとしよう。その中で俺は冷めてしまうのだ。楽しいお祭り。ハメを外しても多少は問題ない。だけど、俺は素直に楽しめない。理由は簡単だ。恥ずかしいのだ。そして理由もなく冷めてしまう。
「ん?でもこれはチャンスだな」
俺はふと例の作戦のことを思い出す。
「君まで妹さんの競技をよしとするの?ま、まさか気になる相手でもいるのかしら?」
「そんな訳ねぇよ。チャンスだと言ったのは例の作戦だ」
「ああ、あのふざけたDQNネームの」
「DQNネームとか言うな」
何故か古海はムスッとした顔。何か気に障ることでも言ったかな?けど俺のことだ。知らず知らずのうちに言っていたのかもしれない。
俺は敢えて古海の不機嫌の元を探るのをやめ脱線しかけている話を元に戻す。
「取り敢えずその作戦で、佐原に出場してもらって手を引いてもらうんだよ。然すれば吊り橋効果(?)で胸がときめきトゥンクとなる!完璧じゃあないか!!」
「そう上手くいくのか不安ね。あと、吊り橋効果は違うわよ」
溜息をつきつつ鋭い突っ込みをする古海。その横で密やかに笑う俺。なかなかにカオスな光景だった。
→→→
このパンツ争奪戦は体育祭開催日で終了だと俺はぬか喜びで家に帰った。
「ただいまーっと!」
「お兄ちゃんだいしゅきホールド(蹴り)!!!」
我が唯一無二の妹がなんと俺にドロップキックを食らわせてきた。もうなんだこれ。俺の妹が末期な件。タイトルこれで行く?え、もうタイトル決まってる?はは、ダメだこりゃ。
「ぶごぉ!?」
「もう!お兄ちゃんたら。あたしのキックをそんな床に転がりながら悦ぶなんて♡う・れ・し・い♡」
我が唯一無二の妹はどうやら目だけではなく頭まで沸いているようだ。
「お、お前!えっ…。何、何すんだよ!ぅえ…」
途絶え途絶えの俺の言葉に我が唯一無二の妹はこういう。
「お兄ちゃん、またあの女と話してたでしょ!」
ビシィッ!!と見下して俺を指さす。
「ねぇ、なんで俺の行動全部筒抜けなの?おかしくない?」
「やだなぁ。お兄ちゃんの行動なんて簡単に読めるよ。それ以前に匂いでわかるよ」
我が唯一無二の妹が怖い。しかしこれも体育祭が過ぎればおさらばだ!俺は喜びを再度噛み締める。
「え、お兄ちゃんなんでそんな幸せそうな顔してるの?え、まさかほんとに蹴られて悦んでるんじゃ…」
結花はドン引きしていた。それでも気にならないくらいに俺の気分は清々しい程だった。
思えばこの時うまく行き過ぎていると考えるべきだったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます