2 アニメではぼっちに厳しい世間だけどリアルはそうでもないヨネ
春うららか。みんな心躍るクラス替え。ボッチにはテンション下がる学校行事。
「わぁ!また一緒だね!」とか「またお前とかよーwww」などの会話が繰り広げられていた。そんな中、富士の頂上の空気のごとく俺は1人読み残していたラノベを読んでいた。
ふと、手元が暗くなる。あれれぇ、とうとう俺の青春だけでなく川端結太という人間自体に暗雲が立ち込めたのかなぁ?
そんな訳もなく、暗くなった原因の人物は俺を見下していた。
「今とても失礼なことを考えてたでしょ」
「詭弁だ」
「否定はしないのね」
ため息を小さく吐いて古海は俺を呆れの目で見ていた。
「それにしても、また君と一緒なんて。私には死神でも憑かれているのかしら」
「おい。その文脈からは俺がまるで死神のように聞こえるんだが?」
「あら、それこそ詭弁なのではないの?」
「じゃあ、文脈何とかしろよ」
「君に命令されるほど私落ちぶれていないわ」
「喧嘩売ってるんだな?買うぞコンチクショウ」
「それはともかくさっきの会話ってリア充みたいだったわね」
「リア充的会話って、こんなに殺伐としてないから」
こいつの毒舌はなんとかした方がいい。社会レベルに絶対ついていけないやつだ。
「ところで、まだ貴方の妹さんは、その、パ、パ…」
寸でのところで古海は言葉を濁す。それはそうだ。近寄りたくない美人とはいえ、それなりに注目を集める美人だ。パンツというワードには抵抗があるのだろう。
「ああ。と言うより去年より酷くなってる」
「君が厳しく指導しないからね」
「いや。しっかり言ってるんだよ?もうこれと言うくらいにな」
「で、君は何か策を練ったのでしょう?」
「ああ。作戦名は"お兄ちゃん離れ強化年間~ラブズッキュン命短し恋せよ乙女!!~"って感じなんだけど」
古海はそれ聞いた途端、かなり引いていた。反応はまんま結花と同じだった。
「何そのセンスの欠けらも無い作戦名は。残念なのは顔だけじゃなくて頭もなのね」
ため息をふっと小さく吐いて、人を小馬鹿にしたような顔で俺を見下す。
「おう、さり気なく俺の顔をディスるな」
「頭の方は自覚があるのね」
「お陰様でな」
「お可哀想に」
「嫌味だよ」
俺の軽い嫌味を華麗に避けて、古海は作戦の概要の説明を求める。どうやら作戦名からは察することは出来なかったようだ。
「それで、作戦内容は具体的に何をするのかしら?」
「作戦名通り、年頃の女子は恋する生き物だ。兄にべったりなんて普通あってはならないことだ。だかr」
「席につけー」
学園モノあるある。話している最中に空気の読めない先生が割り込んでくる。
「じゃあ、放課後また話して頂戴」
古海はそう言うと自分の席へと戻っていった。
→→→
始業式は恙無く終了し、HRも終了。クラスメイト達はクラスカーストぶっちぎりの男子が提案した、新クラス親睦会に参加するため教卓に集まっていた。
「さて、と」
軽いリュックサックを背負い、教室をあとにする。その後から、古海が優雅に追いつく。なんと言うか、クールなのかよく分からないやつだ。
「それで?」
「何が」
「あのセンスの欠如した作戦名の内容のことよ」
「ああ。簡単に言ったら我が唯一無二の妹に恋してもらおうという事だ」
女子は恋してこそ女子ではないのか。と、俺は思う。いや分からんけど。よくクラスの女子が恋バナで盛り上がっているのを聞いて思いついたのだ。
「恋」
「ああ。そうすれば興味が俺のパンツから彼氏のパンツに移るって算段だ」
「パンツから離すって考えはないのかしら」
こめかみを押さえる古海。仕方ないネ!あいつがパンツから離れることはないと思うし。
「それはそうと、妹さんがパンツを盗むきっかけは思い出したの?」
古海はどうやらパンツを盗む原因があると考えているらしい。パンツ泥棒の根源が俺と思っている。
「いや。さっぱりだ」
「そう。…私も手伝うわ」
「へ?」
俺はつい立ち止まってしまう。
「別に、仕方なくよ。妹さんが君ので興奮してしまうなんて可哀想でしょ?」
サラリとひどいことを言いながらすたすたと歩いて行く。立ち止まった俺は早々に追いかける。
「じゃあ、まずは男を探さないとな」
「それならいい人材がいるわ」
まだ真昼の暖かな日差しが、古海の怪しげな笑みを照らしていた。
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