6 何処でもそうだけど選択的ボッチな人ばかりじゃないヨネ!!

「報酬は、貴方で…」

「はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 俺は思わず叫んでしまう。塔ヶ崎先輩は耳を塞いで不満げな表情で俺を睨みつける。

「耳元で…、うるさい…」

「あ、すみません」

 謝ってしまう。しかし、何故中二病と取引した際に、なんて言うか、こう、危ない感じなのが多いのん?

「それって、俺をパシリにしたり、とか?」

 塔ヶ崎先輩はふるふると首を横に振る。そしておもむろに口を開く。

「違う…。うちは、基本的ボッチだから…、お昼ご飯とか…、一緒に帰ったり…、寄り道したり…、しない…。だから、それを、一緒にしたい…、だけ…」

 頬を朱に染めながら塔ヶ崎先輩はたどたどしく話す。母性がくすぐられるね!

 塔ヶ崎先輩は恐らく選択的ボッチではなく、普通に友達が欲しい人なのだ。長年ボッチをしていると普通に人に接するのが難しくなる。そのせいで一人になるボッチも少なくはないだろう。

「そういうことなら、いいですよ。じゃあこの後喫茶店でお茶でもしましょう」

 塔ヶ崎先輩は嬉しそうな表情で俺見て激しく頷く。

「早速…、占う…。相手は…、どうする?」

「相手かぁ。…うーん。テニス部の佐原さわらで頼みます」

 俺は無難なthe普通の人間をチョイスする。

「分かった…」

 塔ヶ崎先輩は頷くなり、部室に置かれてある花瓶の花を抜き取って、花びらを1枚1枚ちぎっていく。

「え、それって…」

 花占いじゃん。それ花占いじゃん?

「少し…違う。これは好き嫌い…、じゃない」

「どういう事です?」

「loveとdeadで構成してある…」

 か、変わらないんだけど。と言うより、deadてかなり危ないのですがそれは。

 俺の心配などつゆ知らず。塔ヶ崎先輩は早速はなうらない(花占いとは言っていない)を始める。

「love…」

「……」

「dead…」

「……」

「love…」

「……」

 ふと、塔ヶ崎先輩は手を止める。何事?と思っていると塔ヶ崎先輩は顔を赤らめ控えめに言う。

「あの…、怖いから…。それに、恥ずかしい…」

「えー…」

 塔ヶ崎先輩曰く人に見られながらすると相性が狂う可能性があるとのこと。そんなわけで俺はオカルト研究部の外で待つことにした。


 →→→


 待つこと数分。塔ヶ崎先輩は部室から出てきた。

「どうでした?」

「相性は…、決して悪いわけじゃない。けど…」

「けど?」

「その、佐原って人は…、性格がかなり悪い…」

「なんでそんなこと分かるんですか?」

「噂…」

「噂では分からないでしょう?」

「……」

「まぁ、それは良かった。ありがとうございます。では喫茶店に行きますか」

 これ以上のことは踏み込んではいけない、俺の直感が警告を脳内で促す。

「うちの….オススメの喫茶店でがある…」

「お、良いですね」

 俺は財布事情を気にしつつ、塔ヶ崎先輩とお茶をしに行くのだった。


 ←←←


「ただいm」

「お兄ちゃんだいしゅきホールド!!!」

 結花が首元に思い切りタックルをかまし抱きついてくる。

「ごべぁ!?」

「えへへー!さあ、お兄ちゃん!あたしをお兄ちゃんの部屋まで連れていくのだ!」

「とうとうコソコソ動くことすらやめたな!?」

「あたぼーよ!バレてるんだからここは正々堂々と」

「とか言って前人様の布団に隠れて忍者のごとくコソコソしてたの誰だよ」

「あれは不可抗力だよ!」

 何も不可抗力は加わってないし。お前が単に俺の事を好きすぎるんだよ。

「そう言えば、お前の学年でテニス部の佐原っていたよな」

「ああ。あのお兄ちゃんにちょっと、ほんのちょぉっと似てる人だね」

「へぇ」

 成程。手応えは悪くない。相性がいいのは本当らしい。けど、気になるのは噂の方だ。佐原は性格が悪い。その性格の悪さの限度が分からない。だからやはり俺が本人を直接拝んでやるしかない。

「お兄ちゃん」

「あん?」

 不意に結花の声のトーンが落ちる。

「お兄ちゃんはあたしの事どう思ってるの?」

「そりゃ、俺の大事な妹さ」

 俺は自覚してこういった。それ以外の答えは俺にはない。

「そっか」

「おう」

「じゃあ、取り敢えず…ん?」

 結花は俺の腹から背の方に移動して、匂いを嗅ぎ始める。

「お兄ちゃん…」

「え、なになに?不穏な空気なんだけど」

「他の女の臭いがするんだけど」

「はえ?」

 何だー。そんな事かー。…な、何だー。ソンナコトカー。

「お兄ちゃんの浮気者!甲斐性無し!この童貞!」

「童貞は関係ないだろ!?」

 出来れば、こんな楽しい妹との生活が続いてくれればいいのに。

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