20 ビーチでBBQするの面倒臭いけどなんだかんだでやっちゃうヨネ!

 しばらくの渋滞をぬけ、山道に入る。

「この道を抜ければ、海がある。ここは、ばぁさんとの思い出の場所なんだよ。ま、別荘も浜辺から近いから、自由に使ってくれて構わないよ。掃除も定期的にしてあるし、冷蔵庫の中もしっかり完備してある」

 なかなかしっかりとしてくれている。ありがたい限りだ。

「何もかもすみません。ありがとうございます」

「はっはっはっ!なに、気にしないでくれ。鳴八に友人なんて、小学生以来だからね。大切にしてやってくれよ?」

「それは…」

 俺は言葉を詰まらせる。大切に、か。果たしてそれは、古海との関係を大切にするのか、はたまた、古海鳴八という人間を大切にするのか。

「くくっ。君のそういうとこ嫌いじゃない。言い切らないことも、時には大切だ」

 気づけば、窓から海が覗いていた。昼の日差しにキラキラと反射して、思わず感嘆の声をあげる。

「おぉ…」

「綺麗だろう?あ、そうだ。これは老いぼれの戯れ言だが、近くの神社で花火大会がある。ここからなら綺麗に見れるし、縁日にいくなら、行くといい」

 それと同時にブレーキをかける。どうやら着いたようだ。それに気づいたのか、後部座席組が起き始める。

「ふぁぁ…。着いたの?お兄ちゃん」

 結花は欠伸をして窓を見る。塔ヶ崎先輩も小さく欠伸をしていた。俺と目が合うと顔を真っ赤にして目をそらす。かわいい。古海もなにか物憂げな顔で外を見ていた。

「じゃ、明後日に迎えに来るよ」

「ありがとうございます、おじい様」

「ありがとうございます!オジサマ!」

「あ、ありが、とうござい…ます…」

 俺はぺこりと顔を下げる。

「じゃあねー」

 車を最後まで見送り、俺たちは(俺は)荷物を別荘の中に持っていく。二階建ての木造建築。海付近の家は、腐食の進みが早いと聞くが、とても綺麗だ。

「一年ごとに補修してるのよ。ちなみに、部屋は二階に一部屋、一階にリビング、キッチン、大部屋がひとつ。トイレは1階にひとつしかないわ。ここの間取りは大体こんな感じね」

 海方面にバルコニーがあり、椅子と机が置かれている。すげぇ。何ここ、俺ここに住みたいわ。

「じゃあ、俺が2階だな」

 俺がそういうと、古海はいう。

「そうね。君みたいな変態と一緒の部屋は嫌だもの」

「男をそういう目で見るのやめてくれ」

「あら、偏見は人間の特権よ」

「違うから。傷つくからやめて」

 そこに、結花も混ざる。

「えー。あたしはお兄ちゃんと同じ部屋がいいなー」

 果ては塔ヶ崎先輩までも、

「うちも、一緒で…いい、よ?」

 だが、俺の理性にストレスを与えそうなので、断っておく。

「良くないからね。ほら、ササッと着替えて海行くぞ。俺は先に用意しておくから」

「用意って?」

 結花は首を傾げる。俺はニヤリと笑う。

「くくくっ!まぁ、楽しみにしておけ」

 俺の笑みを見て全員ドン引きしていたが、まぁいいだろう。

 渋滞を待つ間、古海のおじいさんから倉庫にBBQセットがあるということを聞いたのだ。冷蔵庫には少しお高めの肉が沢山あった。もちろん野菜も。これがあるなら、やらねばなるまい!

 確かに俺はインドア派だが、だからといってBBQの火付けが出来ない訳では無い。

 俺は早速、別荘の裏にある倉庫に行き探る。数分もかからないうちにBBQセットを発見。綺麗に整頓されていたからみつけやすかった。うちの家とは大違いだな。

 炭と着火剤、チャッカマンと準備もオーケー。俺はせっせと浜辺にBBQセットを組み立て、炭と着火剤をいれ、火をつけしばらく風を送る。

 唯一の失敗といえば、濡れタオルを忘れたことだ。

「暑い…!暑すぎるっ!」

 真夏の太陽が俺の身をジリジリと焦がす。それと同時に、着火剤に着いた火がさらに俺を焼く。

 これを毎年リア充の方々はやっているのか。少しだけ尊敬するね。だが、案外みんなそれを楽しんでいるのでは?まさか、マゾなのか?陽キャパネェ。

 暫くして、火が安定してきたので俺はビーチパラソルを開き、シートを敷き、折り畳みの机と椅子を用意。

「ふー。暑い…」

 あとは、古海たちが来るのを待つだけだ。俺は水平線を眺めて待つことにしたのだった。

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