5 オカルトボッチ少女に頼り始めたら取り返しがつかなくなるネ…。
さて、妹と気まずい雰囲気になった翌日の放課後。俺は眼帯かけた変な先輩に手を引かれ、周りの視線を集めながら歩いていた。勿論その先輩は女の子だ。男なら俺は全力疾走してた。
「あの、そろそろこの手と理由を聞きたいのですが…」
変な先輩は顔だけをこちらに向ける。
小さくてぷにっとした童顔。可愛らしさがあり、愛嬌のあるくりくりとした目。ツインテールにしている艶やかな黒髪は歩く度ピコピコと揺れる。身長は俺の胸元あたりくらい。そんなに高くなく、標準より下の方だ。ハッキリいうとこの先輩ものすごく可愛い。
「まだ…。部室に着いたら…話す…」
蚊の鳴くような声。聞き取れないという程でないが。
「はぁ…」
俺はほとほと困り果てていた。
全ては古海が元凶だ。始まりは今朝から。
→→→
「おはよう、川端君。見つけたわよ」
教室に入り席につくなり、古海はスタスタと俺のところへやってきた。その途中、クラスの女子たちが固まっている間を割り込むように歩いていくる。
そういうところがよくないと思うんですよ、ぼかぁ。
「お、おう。おはようさん。見つけてくれたか」
「ええ。この先輩よ」
「また先輩のシチュエーションでいくの?」
スッと差し出された紙切れ。その紙切れに俺は目を通す。
そして驚愕の事実。
「女子じゃん」
「そうね。女子ね」
「
読むだけでも危ない。というか、
「いや、なんで男を諦めてるの?なんで同性愛の方にイッちゃうの?」
「男とだなんて不潔でしょう?妹さんには清潔にいて欲しいでしょう?それなら男より女の方が手っ取り早いと思ったのよ」
本末転倒どころか脱線してるよ。壮大な事故になってるよ!
「いや、もう1回リサーチし直して」
「もう相談済みよ」
「えー…」
まさかここまで古海がフリーダムだとは思っていなかった。なんというか、淑女的なイメージが固定されていたからだろう。まぁ、自分のイメージを他人に押し付けるのは良くないよな。
「空いている時間が放課後しかないらしいの。だから、放課後に食堂で待ち合わせって事で話をつけてきたわ。どうせ暇な君でしょ?別にいいじゃない」
「お前、いつも一言多いぞ…」
「自覚してるわ」
自覚症状はタチが悪い。だが、もう用件を話してしまったらしいので行くとしよう。ドタキャンは悲しいからな。
ドタキャンのワードで過去の嫌な思い出が蘇る。
あれは中1の夏だったか。当初はまだ友達と言える奴とつるんでいた頃。友人Aはこう言った。
友人A「明日女子連れてプール行こうぜ」
俺「おっ、いいな」
友人B「じゃ、誘ってくるわー」
友人Aと友人Bはキャッキャッと黄色い声をあげて話している女子の群れに飛び込んでいった。女子達と話して暫くすると、友人Aは顔をこちらに向けぐっとサムズアップをした。
そして予定当日。予定より早く集合場所に着いてスマホを弄っていた時だ。ピロリンと某SNSから友人Aのメールが届いた。内容はこうだ。
友人A『女子達がお前がいると気味悪いから抜きで違うプールに行こうって話になった笑』
俺『えっ』
友人A『だから俺と友人Bは行けねぇや笑。じゃあまた始業式な笑笑』
それ以来そいつらとは疎遠になり、というか俺が避けた。始業式以降話してもないし某SNSのやり取りもしていない。ブロックしてやった。ドタキャンされた夜は枕を涙と汗で濡らした。何なら、絶対に五代末裔まで呪うノートを作ったまである。
そんなわけで仕方なく放課後、食堂に向かったのだった。
←←←
食堂に到着し、そのまま奥の隅っこの席に座る。座る途中、イチゴ・オレと微糖コーヒーを買っておく。
二つ買ったのには理由がある。一つ目の理由はわざわざ来て頂いてありがとうございますという感謝の礼。そして二つ目は、来て頂いて申し訳ないのですけれどもうちの妹とは一切合切関わらないでくださいという押しの念である。
噂はどうであれ、百合は勘弁していただきたい所存。断る気満々で俺はその先輩を待っていた。
待ち座ること数分。その先輩はきた。左目に眼帯をして。うちは基本校則が緩く、ブレザーの下に何着ようが文句一つ言われない。が、この先輩は限度を知らないようだ。なんとゴスロリ衣装を下に来ているではないか。どうやら生地がかなり薄いらしく、制服のスカートはモコっとなっていない。
「あなたが…、ますたぁ?」
イタタタタッ!やばい!その年でこれは痛すぎる!
「あ、えっと、あはは…」
じっと俺の目を見つめてくる。相当痛い。というかやめて頂きたい。昔の俺を見てるようでかなり精神的負荷が…。
「ウチは…、塔ヶ崎…、颯乃…。18歳…、処女。趣味は…、オカルト…。主な主食は…、人間の生き血…」
生き血のところは何故かドヤ顔。何故かいたたまれない気持ちに苛まされる。
「ま、まぁ、お座り下さい。ジュースも用意したので。あ、どちらがいいですか?」
塔ヶ崎先輩はイチゴ・オレに手を伸ばしかけた後俺をちらりと見る。そして塔ヶ崎先輩の手はイチゴ・オレから針路変更し微糖コーヒーへと伸ばされる。
「じ、じゃあ…、微糖コーヒー…で」
コーヒーを受け取り、カシュッと心地の良いプルタブを開ける。
俺はイチゴ・オレを開けずに手元に置いておく。このパターンは知っている。妹も同じ時期があったのでよく覚えているのだ。そりゃ後輩にいいとこ見せたいのはわかるけど…。
こくりとコーヒーを口に含んだ瞬間、塔ヶ崎先輩は得もしれない震えに襲われる。
「う…」
口元を両手で抑え必死にコーヒーを飲み込んでいた。
「ん、ふぅ…」
な、何だろ。何か変な気分になる。え、エロい!が、俺はそんな下心丸見えな表情を押し殺し、極めて平常心を保つ。
「あの、先輩?イチゴ・オレ、飲みます?」
「……」
塔ヶ崎先輩は暫く俺の言葉を吟味し、バレたのなら仕方ないと言わんばかりに、小さく頷く。
「どうぞ」
イチゴ・オレを受け渡し、俺はコーヒーを貰う。そして一口口に含む。それを見た塔ヶ崎先輩は硬直する。
「さて、本題なんですけど、ってあれ?先輩?せんぱーい?」
目の前で手を振るも反応なし。試しに肩をチョンと叩く。
「へぁっ!?」
ビクンっと身体を震わせ赤くなった顔で俺を見る。
「話を続けますね。えーと相談の件何ですが…」
「分かっている…」
「そうですか!話が早くて助かります」
「ウチと…、後輩の…、契のことだろう…」
は?後輩って俺?契って何?あ、やばい。これ話伝わってないやつだ。そう思った時にはもう遅い。手首をガシリと掴まれ、食堂から出ていたのだ。
←←←
そして冒頭に戻る。
引っ張られてもさして力が強いわけでもないが、振り払えば塔ヶ崎先輩が転けてしまうかもしれない。それは可哀想なので辞めておくことにした。
そうこうして連れられてきたのは、
「オカルト研究部?」
「そう…。現在、ウチを含めて…、部員数は1人」
1人って、もうあんたしか居ないじゃないかよ。
「同好会も難しいレベル…」
「と言うより、廃部になった…」
あちゃー。おしまいじゃん。それの件に俺はどう関わっているというのか。
「ウチの、恋占いは…、よく当たると有名。だから、後輩の、妹と理想彼氏の相性を、占えばいい。妹を…、兄離れ、させたいなら…、ウチの占いを聞くべき」
ははぁ。成程。古海が薦めてきた理由はこれか。アイツ紛らわしいことしてくるな。
「それなら一丁占って貰えますか?」
塔ヶ崎先輩はコクリと頷き、そして俺の耳元で囁く。
「報酬は…でいい」
「は?はあぁぁぁぁぁぁ!?」
報酬内容が突飛過ぎて俺は思わずあとずさりをしてしまった。
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