第17話 再び冒険に出かけよう2
施設内迷子事件は、最初に案内して頂いた青リスさんの登場により、未遂に終わりました!!
扉の前で崩折れていた私を、手をタシタシと叩いて気付かせ、そのままコテンと首を傾げて魅せたこの子を思わず抱きしめてしまっても、私は悪くありませんよね!!
そんなこんなで、何とか見覚えのある扉に辿り着きました!!
やっと施設から出られますね。まぁ、私が勝手に迷子化していただけなんですが…。
そして、怖いのが延長料金です。
若干熱中し過ぎて、何時から始めたのか覚えていないのが1番の問題ですが……。
「お疲れ様でした、アリア様。」
扉から出ると、受付嬢さんが声をかけてくれました。
「あ、どうも。あの~、お時間は……。」
「3時間の延長となっております。ずいぶんと集中して作業なされていたようですね。」
「あう、すみません。」
「いえいえ、謝って戴くことではございません。むしろ、生産に真摯に向き合って戴ける事が嬉しいです。」
クールビューティーな受付嬢さんが、ほのかに笑いました。
なんか普段笑わない人の笑顔って、スゴイ破壊力ありますよね!!
それはさておき、問題は延長料金です。
いくら懐が寒くなろうと、払うものは払わなければいけないのです!!
意を決して、受付嬢さんに切り込みます!!
「あの、延長料金なんですが……」
「延長料金3時間分、しめて450ギル戴きます。
………と言いたい所ですが、既にマリーサ様がお支払いになっております。」
なんですと!!
マリーサさんが、いい人過ぎます!!
やっぱりあの人は、筋金入りのツンデレさんなんですね!!
それはともかく、マリーサさんにお礼を言いに伺わなければ!!
「あの、マリーサさんのお店を教えて戴けますか!!」
「それでは、少々お待ち下さい。丁度、業務交代の時間ですので、私がご案内致します。」
待つことしばらく、私服に着替えた受付嬢さんがいらっしゃいました。
やっぱり美人さんは、何を着ていても良く似合ってますね~。
ちなみに、今受付には肝っ玉母さんといった風貌の女性が。お名前はメリッサさんとおっしゃるそうです。
「それでは、アリア様。マリーサ様の店へご案内致します。」
「あの、今はお客という訳ではないので…。」
「これは失礼をいt………。ごめんなさいね、ついつい仕事中の癖が抜けなくて。それと、自己紹介がまだだったかしら?」
「あ、言われてみればそうでしたね!!」
「では、改めてエルザといいます。よろしくね、アリアさん。」
なんだろう、私の中でクールビューティー受付嬢から頼れる凛々しいお姉さんに、エルザさんがランクアップしましたよ!!
「では、行きましょうアリアさん。目的地は、すぐそこです。」
エルザさんの先導で、目的地へは本当にすぐに着きました。
ビックリするほど近かったですね!!
そして目の前には、こじんまりとしたお店が。
看板には、『マリーサ魔法薬店』と書いてあり、大釜と黒猫をあしらったデザインが描いてありました。
「いかにも……って感じですね~」
「あら、古くさいって正直に言っても良いのよ?」
素顔のエルザさんは、結構お茶目な方のようですね!!
それにしても、先程から店の中から鼻につくような、それでいて引き込まれるような甘い香りが…。
「アリアさん、気をしっかり持って。」
肩をトンと叩かれ、正気に戻りました。
なんだったんでしょうか、今のは……。
急ぎログを確認してみると、そこにはバッドステータスである混乱と魅力の文字が……。
え、今の一瞬で2つも状態異常を貰ったんですか!!
そう考えると、目の前の扉を開けるのが怖くなってきました……。
「そんなに怯えないで。抵抗する意志さえあれば、薬品の残り香ぐらいでは、重度の状態異常にまではならないわ。………それにしても母さんたら、街中の工房で月華草とグラングルンベリーを使うなんて。相変わらず周囲への配慮が甘いんだから……。」
「あ、そうなんですか………って、え、お母さん?」
なにやら、衝撃的な事実が飛び出して参りました!!
え、あのツンデレさんの娘さんが、エルザさん!?
あまりの事実に戦慄していると、店の中から大声が響いて参りました。
「な~にを店の外でくっちゃべっているんだい。営業妨害するようだと、毒薬ぶちまけるよ!!」
やっぱり、私にはエルザさんがマリーサさんの娘さんだなんて信じられません!!
愕然とする私をよそに、マリーサさんはごく自然に店の中に入って行かれました。
「そんなに口が悪い方が客が逃げるわよ、母さん?」
「なんだい、エルザかい。さっきは逃げ道無くして、人に金払わせたクセによく言うよッ!!」
「ただいま、母さん。その事で、表にお客さんよ?」
「あんた、まさか……。」
お店の中で何やら騒いでますが、絶賛フリーズ中の私には届いていませんでした。
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