第21話
ぼくが羽を片方失って、どうにか兵舎まで戻ってきたのと時を同じくして、『ヘキサ』に火の手があがった。それから間もなく、『剛魔軍』と3姉妹、生き残った数少ないモンスターたちが帰還した。『ヘキサ』は、陥落したんだ。勇者は5人まで死体を確認して、残り1人は重傷は負わせたが行方不明らしい。死体は……まあ、使い方は大体察しが付くよね。
「お兄ちゃん!」
「やあミド、みんなも」
「よかった!」
「心配しましたよ」
「ウホッホ!」
「く、苦しいよジャイア~」
ミドたちは、みんな無事だった。抱き着かれた時に腕が取れちゃったけど、まあよかったよかった。
「で、どうでした?」
「残念ながら、かな」
フジコさんの話によると、あれから一員として戦闘に参加したそうだ。けど、これといって目立つ戦功はあげられてない。ま、それはそうだろね、周りは猛者ばっかりなんだから。ぼくの作戦は失敗だったようだ。
「ごめん」
「いいよ、みんな無事なんだし」
くよくよしても仕方ないしね。とりあえず今は皆に休んでもら事が大事だ。かなり消耗してるし傷もできてる。『剛魔軍』がどういう返事をするか確かめてから動いても遅くない。
それと、今回の戦功は全て3姉妹のものとなるようだった。勿論、裏で何かしら取引があったんだろう。元帥に恩を売って、ってとこだろうけど、まあこれも考えてもしようがない。3姉妹はどう思ってるんだろうか?
『妖魔軍』は壊滅だ。何しろぼくたちを含めても1割も残ってない。とはいえ、戦力の大部分は3姉妹だし、モンスターは補充が効くからそれほどの損害でもないんだろうけどね。なんだかやりきれない。
それに比べて『剛魔軍』は死傷者なしで終わってる。やっぱり、全然違うんだな、最初から『剛魔軍』に会えてたら……やめやめ、たらればしてもなんにもならない。
「ふう」
ぼくは、月明かりの下1人未だ燃えている『ヘキサ』をぼうっと眺めていた。明日には、他の『妖魔軍』が来て街の人をモンスターに変えるんだろう。ぼくの村と同じことが、また起こるだけなんだ。いったい、何人のぼくたちがあそこにいたんだろう? 戦ってる間、そんなこと考えもしなかった。
「……」
ああ、やだなあ。けど、考えてたら今までも生きてられなかったんだよね。そうだよ、もうぼくたちは何回も何回もぼくたちを―。
「よう」
「わっ」
びっくりした、ヤンじゃないか。心臓によくないよ動いてないけど。
「隣、いいか?」
「え」
ヤンが、ぼくのそばに腰かけた。答えを聞く気がないなら尋ねないでよもう。
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