第11話

 状況を整理しよう。やや焼け焦げて森の中に転がっている生首のぼくだ。トモナミがいるからすぐみんな探し出してくれるだろうと思うけど、それでも寂しさと不安は残る。目の端の焦げた鳥モンスターの端がとりあえずの友達だね。

 おや? この鼻息と息遣いは、何かがぼくの後頭部を嗅いでいるのかな? あ、遠ざかっていく。ゾンビなのに感謝と同時に複雑な気分になるね。

 ああ、鳥モンスターが消えた、持って行ったな姿の見えない悪党め。


「あーあ」

「げ」


 遠くに見えるあれは、ヤンじゃないか! なんでこんなところに……ああ、どうか気づきませんように。死んだふりしようかな。


「あ」


 近づかないでくれよ。どうか何か別のものを見つけたんでありますように。


「なにしてんだよ」

「そうなるよねえ」


 儚い願いだったよ。ヤンはぼくに話しかけてきた。それとね、嫌いなのはわかるけどそこらへんの枝をほっぺに突き刺してぼくを持ち上げるのはやめてくれないかな。ずぶりっていうのは嫌な音だよ。


「で、なにしてんだ?」

「色々あってね、放っておいてくれない?」


 ああ、ヤンの眉間に皺が寄る。生首だけってのはやっぱり体によくないんだな、思考力が落ちてる気がする。いやゾンビになってからかな?


「なに?」

「あ~……できればその……そのままにしておいて欲しいかなって……思いますはい」

「……体どうしたの」

「無くしちゃった」


 どういう会話なんだろうね、これ。


「ふ~ん……」

「あた」


 ヤンがぼくを支えていた枝から手を離して、元来た道へ戻っていく。おお、ここからだとお尻が良く見える、尻尾がピコピコしてるのはなんだか新鮮だね。

 ふう、ともかく行ってくれたぞ。これで少し安心だ、あとは早くトモナミが来てくれればなあ。




 う~ん、遅い。探してくれてないとかだといやだなあ、いけないいけない、ネガティブ思考はよくないよ。何か楽しいことを……うわ、ヤンがまたこっちに来てる……。今度はなんだろう? まさか気が変わってぼくをいじめにきたんじゃないだろうか。ああいやだいやだ。トモナミ、ミド、フジコさん、誰でもいいから来てくれないかな。うう、もう目と鼻の先だ。


「ね、ねえ、ぼくに構うよりも今は戦争中だしヘキサをちゃんと偵察するとか……」


 ヤンはぼくをまた持ち上げて……枝が折れてもっと太いのを刺してだ。何かの上に置いた。


「?」

「動くか?」

「ん?」


 ヤンにそう言われてようやく気付いた。

 ぼくに、体がついていた。緑色の体毛に、背中の葉っぱと枝の翼、先に果物のあるこの見た目からすると、デビルエントかな? 首がくっついてるってことは死体を持ってきた? なんで?


「ほら、いくぞ」

「わわ」


 ヤンが、ぼくの手を掴んでひっぱる。ま、待ってよまだくっついたばかりで上手く動かせないんだ。


「ど、どこいくの?」

「その体の使い方、教えてやるよ」

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