第12話
「ほら」
「ちょ、ちょっと待って……」
森を出て、ぼくはヤンと新しい『デビルエント』の体を慣らしていた。ヤンはぼくの体を支えながら、飛び方を教えてくれてる。枝の羽だから、あんまり早くも高くも飛べないけどね。
「飛ぶのって難しいね」
「まあな」
う~ん、意図はなんだろう? まさかこの体に爆弾を仕込んでるとか、あるいはここをヘキサの防衛隊にでも見つけさせてアクシデントを装って暗殺するとかかな。そんな頭がヤンにあるわけないからそうすると姉達の指示という可能性も……。
「慣れたか?」
「ま、まあ」
ミド、トモナミ、見つけてくれ。結構まずいぞ、ぼくはそんなに強くないから勇者じゃなくても結構強い一般人にも負けちゃうぞ。
「なあ」
「な、なんでしょう」
いや、その前にヤンにやられちゃう可能性を考えてなかった。下手に抵抗したら反逆罪にされるかもしれない。そうなるとすぐにでも剛魔軍に……いやいや、今だと心許ないからみんなを『転心』させてたんじゃないか。くそう、『どくのつば』が効くかな?
「……あの勇者のことさ、……ありがとな」
「え?」
「だから前の……ほら、姉様たちもいただろ」
あの『勇者』の時のことかな? それにしても……お礼……? 油断させる気かな。
「姉様たちはああだけど……その見栄っ張りなだけなんだ。あたしには優しいしお母さまにも……そう、お母さまにみんな褒められたいから、お前達にはついさ。謝って済まないけど、わかってくれねえか?」
あれ? もしかして……謝られてる? なんかもじもじしてるし。
「そ、それに、あたしは結構お前を―」
「おにいちゃあああああああああん!」
「見つけたあああああああああ! ああああ⁉ あのくそ猿がいるううううう!」
おお、見つけたくれたみたいだ。
ミドとトモナミが勢いよくぼくらの近くに着地する。う~ん、どんどん人間の形から遠ざかっているような気がする。
「なんじゃあああああ⁉」
「ケツ穴増やされてえのかごらあああああああああ⁉」
「はいはい、落ち着いて」
ぼくは相変わらずの2人を宥める。今いい雰囲気なんだよ。これなら『剛魔軍』への移動もヤンを通して案外円満に進んじゃったりするかもしれない。ぼくだけでなく、ミドたちともそうすればより……。
「……! おら!」
「おや?」
背中に衝撃が走り、ぼくは空中から地面へまっさかさま。どうやらヤンに蹴られたみたいだ。
「なにさらすんじゃああああ!」
「ぶっころすうううううう!」
「けっ! 気晴らしにぶちのめしてやろうと思ったけど運の良い野郎だぜ! 憶えてろよ!」
ぼくが地面から顔を引き上げ空を見たときには、ヤンはもうずいぶん遠くに飛んで行ってしまっていた。
「しねええええええええええええ!」
「堕ちろおおおおおおおお!」
ミドとトモナミは、ヤンに炎と雷を飛ばすけど全く届いてない。『転心』で生まれ変わってまだレベルが十分じゃないんだ。
ぼくは2人を宥めつつ、もう点になっちゃったヤンを見る。う~ん、まずいなあ、まずいことばっかりだ。ヤンが機嫌を直してくれるといいんだけどなあ。
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