第13話

「あ、戻ってきた」

「ウホッホ!」

「どーもどーも」

「どうしたんだいその体?」


 ミドの背中に乗ってみんなのところに戻ったぼくは、これまでの敬意を説明した。


「野郎、なに企んでやがるんだ?」

「ぶっ殺すしかねえな」

「物騒な会話をしない」


 ミドとトモナミは、これがなければなあ。いつかとんでもないことをしてしまいそうで怖いよ。


「そうそう、君に教えておくよ」

「はい?」

「ゾンビ系は違う系統のモンスターの肉体をくっつけると段々腐っていっちゃうからね、今度から気を付けて」

「え~、じゃあこのままだとまずいじゃないですか」

「すぐに『転心』してあげるよ」


 そっか、そういう仕組みなのか。まあそれもそうか、普通の体にゾンビの部品をくっつけたら侵食されそうな雰囲気あるもんね。それにしても最初に言ってくれればいいのに。

 と、オネスがおどおどしながら一歩前に出てきた。


「フ、フジコさん。次はオレの番だって……」

「ああ⁉ だーっとれくそガキャァ‼」

「お兄ちゃんが先じゃボケ‼ てめえは便所の底にでも入っとれ‼」

「品性の欠片もないですね。死ぬべきです」

「う、うううう……」


 ああ、もう。なんでそう辛辣なのかなあ。泣いちゃったじゃないか。


「泣かないでオネス。よしよし」

「ウホホホ」

「ぼくはどっちが先でもいいけど」


 意外とフジコさんってクールだよね。さてと……ぼくがすべきなのは状況確認かな。


「フジコさん、今の皆の状況を詳しく教えてください」

「ミドちゃん、トモナミちゃん、アイジャちゃんは『配合』が限界まで終わってレベル上げの最中。パエスちゃんとオネスちゃんはまだ途中ね」

「ありがとうございます。それぞれ何か変わったところは?」

「パエスちゃんとオネスちゃんを除いて、皆素の力を挙げる方向で進めてるよ。単純に以前より戦闘力があがって『特技』に変化はないかなあ」


 ふむふむ、願ったり叶ったり。『剛魔軍』に売り込むにはそういう強さの方が分かりやすそうだしね。問題は、補助専門のパエス、オネス、ぼくたちがどう見られるかだ。いくら武闘派っていっても、レイヴンシャドーさんみたいなモンスターがいるなら補助系もいるはずだし、ぼくらより優秀だと立つ瀬がないよ。かといって、今から戦闘要員っていうのもなあ。


「大丈夫だよ、ぼくからも言うから」


 そんなぼくの不安を知ってか、フジコさんが言う。ありがたいけど、やっぱり不安だなあ。とりあえず、ここは……。


「ぼくはいいですから、パエスとオネスを先にお願いします。できれば、戦闘力もあげの方向で」

「わかった、けど時間がかかるよ?」

「最悪ぼくは首だけあればいいですから」


 言っておくけど、自虐じゃないよ。自分の事は自分が一番知ってる、ぼくはどれだけ強い体でも碌に戦えない。だって弱いんだもん。死ににくいゾンビ系が一番性に合ってるんだよね。なにより、この体はヤンがくれたやつだ。いきなり変わってると印象が良くない、できれば何か理由があって初めて変えないと。戦いまでに腐っちゃうか、戦いで怪我でもするといいんだけど。

 さて、あとは戦いまでにみんながベストになってくれるか、そして戦いで活躍できるかだ。正念場だぞ、がんばらなくちゃ。

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