第14話
水の都『ヘキサ』。大河に面し、街の中にも水路が巡り、漁業と船を利用した交易、運送業が盛ん。中立国としてどこかに属してはいないものの、その立地から周辺各国の主要な輸送路として機能しており関係は良好。前読んだパパの部屋にあった本そのままだけど、これがぼくが知ってる『ヘキサ』だ。門は閉ざされ、高い石壁に町全体が囲まれていて後ろには大河が横たえている、人口約1万1000人、自衛軍約2000人、大部分が水軍。
あれから1週間後、『妖魔軍』『剛魔軍』連合軍とともに目の前にあるそれを、ぼくは見ていた。『ヘキサ』前の草原に、『妖魔軍』3000、『剛魔軍』1000で別れて陣取ってる。兵力では2倍あるけどさてさて。指揮権が3姉妹にあるのがすごく不安だ。
「やっつけるわよ」
「早くやるのよ」
「もう少し我慢です」
「-‼」
「-‼」
「にゃはは! こーふんしてきたわー!」
『剛魔軍』の方はやる気満々みたいだね。戦闘専門だし当たり前か。対する『妖魔軍』は……みんななんかやりたい放題してるなあ、まあ3姉妹が碌に指示しないし一般人出身者が多いからこっちも当たり前か。
「見張っておくのよ?」
「はい、お姉さま~」
「……」
ヤンは目の前のヘキサよりも、『剛魔軍』が気になってるみたいだ。元帥に対する体面があるんだろうけど、指揮官失格だよ全く。
「大丈夫かい?」
「あ、はい」
フジコさんの言葉で我に返る。そうだ、ぼくは、まずみんなのことを考えないと。結局、オネスの強化は中途半端、ぼくは『配合』ができなかった。でも、体はフジコさんの言うように腐り始めてるけど、まだ動きに支障が出る程じゃない。ミドたちが万全ならこれで良しと思うべきだ。
「お兄ちゃん、ミドはどうすればいい?」
「うん、作戦に変更はなし。ミド、トモナミ、アイジャは前衛で戦って、ぼくたちは補助。エスパは回復を中心にして、オネスはぼくとエスパを庇うように動くこと」
「お、おう」
言っといてなんだけど、ひどい作戦だ。けどこれ以上思いつかないのも本当だ、3姉妹はとにかく突っ込ませるからなあ。乱戦が基本とか嫌になっちゃう。せめてフジコさんは後方にいて欲しいんだけど、それはそれで怖いんだよなあ。3姉妹が手を出してきたりしたら……。結局近くにいてもらうしかない。
「さあ、行きなさい! 突撃よ!」
「突撃~」
「突撃‼」
パマの号令がかかって、全軍が走り出した。これだ、最初に遠距離攻撃できるモンスターに攻撃させればいいのに。
「始まったわ」
「開始だわ」
「行きますよ皆さん」
「-‼」
「-‼」
「にゃはーっ‼」
あーもう、『剛魔軍』と『妖魔軍』が綺麗に左右に分かれてるよ。『剛魔軍』はこっちに巻き込まれてたくないんだろうな、隊列がきちんとしてて全然違うもん。
ええい、愚痴はここまで。ぼくらはぼくらで生き残って、活躍することを考えないと。
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