第4話

 兵舎に戻ったボクとフジコさんは、皆に剛魔軍のことを伝えて情報収集にかかった。

 といっても、有益な情報はない。武闘派揃いのモンスターが多いこと、妖魔軍とは仲が悪いといった、すでに知っていた事ばかりだ。まあ仕方ないか、本や文字がないから伝聞でしか情報を伝えられないもんね。


「と、言うわけで情報収集は後回しにして、今回の作戦を発表するよ」

「お兄ちゃんかっこういい!」

「人型の魔物がいないかしら?」

「戦いって疲れて嫌ですね。ほら枝毛がこんなに」

「うっほうほっほっほ! ほっほっほっほ!」

「そ、そうだねアイジャ。ひい! ひげを引っ張らないでよお!」

「静かに。まあ今回も今まで通り先頭を切らされるだろうから、ミドとトモナミ、アイジャの補助をボクたちがするよ」


 それなりに戦っていると、傾向が見えてくる。3姉妹は僕たちを突っ込ませて、ある程度カタがついてから初めて参戦しておいしいところを持っていく。

 戦略的には正しい。ボクらは強いから大抵勝てるし、負けるようだとそれなりの相手がいるってことで作戦を組み立てなおせるからね。気分は良くないけど。


「反逆は時期尚早かい?」

 

 フジコさんがいたずらっぽく聞いてくる。

 残念ながら、今3姉妹と闘っても相打ちか勝っても満身創痍の可能性が高い。その上倒しても利益が薄い、後ろにははるかに強い元帥は勿論、魔王がいるうえに反逆者だ。

 それを知っててフジコさんは尋ねてる。まるでボクの悩みを見透かして、挑発してるかのように。でもそこがたまりません。


「早く人型になりたいねー」

「露出狂、わざとできなくしてない?」

「そんな器用じゃないよ僕は。こればっかりは向き不向きがあるからね。それとこれは露出狂じゃなくて民族衣装」

「きっと心がどす黒いからですね」

「なにを!」

「やるか!」

「うほほほ!」

「ば、バナナは一日100本までって決めたじゃない……」


 こうしてみると、姿かたちはともかく村のころと変わらないよなあ。けど、そのせいで益々やってることのギャップに悩む。人殺しと破壊工作だもんね。その違和感を持ってる僕だって偉そうに言えない、手を染めてるんだから。

 いっそ消えてくれた方が、みんなともっと楽しく過ごせるのかもしれない。勇者も魔王軍も忘れて……でもそれは僕じゃない。そんな気がする。


「……今日はみんなで寝よっか?」

「本当⁉ お兄ちゃん!」

「隣はあたしよ!」

「あなたたち忘れたんですか? なんど寝返りで彼をバラバラにしたんです。さ、私と寝ましょうね?」

「うほほほほーっ‼」

「ぐえー! 首が締まる締まるよ! 興奮しないでえ!」

「フジコさんもぜひ―」

「さてと、おいとまするよ」


 つれないなあもう。

 なんだかんだ、こうしてると落ち着く。きっといつかは……そうだよ、パパとママだって戻ってきていままで通りに……ね。

 諦めないぞ。


 

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