第5話
「押すんじゃねーよ」
「腹減ったなあ」
「ママ―?」
「おい迷子だぞ迷子。ドリルカンガルーのお母さーん?」
「バカ、同じモンスターで親子って限らないんだぞ」
中々壮観だね、約3000ってところかな? 3姉妹率いる妖魔軍は、総出で合流予定の剛魔軍を出迎えていた。歓迎じゃないよ、見栄とか牽制とかだね。見栄っ張りなんだから。ちなみにボクらは3姉妹の前、一番奥の方にいる。
「お兄ちゃんお兄ちゃん。今聞いたんだけどね、剛魔軍にはなんかすごい奴が2人いるんだって」
「あたしなんか名前も知ってるのよ。ドルーインとハスボン!」
「あ、あたしが言おうとしたのに!」
「早いもん勝ちよ」
「喧嘩しないの」
一波乱ありそうだね。仲の悪い同士でどっちが指揮をとるか絶対揉める。元帥の口調だとこっちが主っぽいけど、軍の数と強さによってはわからない。熾烈な権力争いが起こる。
そして、ボクたちが色々やらされるんだろうなあ。嫌になっちゃう。
「あれじゃねーか?」
誰かの一言とともに、それは見えてきた。
地響きを立てて歩む『じょうさいワニ』、けどボクたちのとは違って、背中のお城が石造りのだ。ワニもあちこち古傷だらけで、いかにも歴戦の古強者って感じがする。
もう少しで鼻先に並んでる兵士の誰かがぶつかりそうになってどよめきが起こってから『じょうさいワニ』は停まった。
「舐めやがって」
「お下品ですね~」
ヤンとミレのつぶやきが聞こえた。まあ、あれだよね威圧だよね。
お城の城門が開いて、次々モンスターが飛び降りてくる。ここまで演出に凝らなくてもいいと思うな。
「トモナミ、どう?」
「えっと……『疾風オロチ』、『シールドタイタン』……」
ひそかにトモナミに出てきてるモンスターを見てもらってる、あとでフジコさんとすり合わせないとね。戦力分析は大事大事。
「それっぽいのが出てきたよ。『ツインオーガ』に『白蓮ネコ』と『レイヴンシャドー』。強力なモンスターだ」
フジコさんの言葉と同時に、軍が割れてその中を悠々と進む4体のモンスターがいた。ボクの後ろでヤンの舌打ちがまた鳴った。
ひときわ大きい防具をつけた鬼が2体、これが『ツインオーガ』だね。左のオーガの肩に乗ってにやにやしてる白猫人間が『白蓮ネコ』、先頭の黒いなんか影っぽいのが『レイヴンシャドー』かな。あ、羽っぽいのが見えた、きっとそうだ。
さて、どれがそのドルーインとハスボンか。こういう時いかにもなのは違うんだよね、『白蓮ネコ』と『レイヴンシャドー』かな。でもそう見せかけてオーガの方かもしれないし……。
それより全部でも1000人か、思ったより少ないね。数の上ではこっちの勝ちだけどはてさて。
「お待ちしておりましたわ」
パマの声。まったく待ってる気配がなくて逆に心配だ、少しは隠さないのかな?
『白蓮ネコ』がくすくす笑ってる、良くないぞ向こうが上手だ。
「剛魔軍、シルベーニャ麾下第2大隊です。こちらを」
「……確かに~」
『レイヴンシャドー』が証明書類を渡して、ミレが確認した。とりあえずは偽物じゃないね。第2大隊ってことは当然第1もあるはず、兵員はパッと見1000人ってところだね。シルベーニャっていうのも気になるなあ、情報部を自由に使えればこんな疑問はすぐになくなるのに。
「ドルーイン殿とハスボン殿はどちらですか?」
ん? この中にいないの?
「先ほどからそちらに?」
みんなで一斉に『レイヴンシャドー』の指さす先を見る。
「遠かったわね」
「暴れたいわね」
小さな小さな、ピョンピョン跳ねる妖精がそこにいた。巻帽子をかぶって、ゆったりとして布地の服を着た女の子が2人。大きさは、僕の握りこぶしくらいかな。
あ、転んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます