第7話

 『ちび将軍』のドルーインとハスボン率いる『剛魔軍』シルベーニャ麾下第2大隊の面々の兵舎は、そのまま『じょうさいワニ』の背中のお城の中にあった。というより、お城の好きなところにみんな勝手に住んでるって感じだね。

 『レイヴンシャドー』に案内されて、ぼくとフジコさん、パエスはその長い木張りの廊下を進んでいた。あちこちから、敵意半分興味半分の割合くらいでモンスターたちがぼくたちを覗いていた。

 数が数だから狭く感じるけど、雨風には悩まされなくて済むし設備はこっちの方がよさそうだ。『妖魔軍』も『じょうさいワニ』はあるんだからこうすればいいのに、何か理由があるのかな?

 兵舎を訪れた『レイヴンシャドー』は、内密にドルーインたちがフジコさんと会いたがっていると伝えて、一緒に来てほしいと言った。

 それに対してフジコさんは、ぼくとパエスの同行を許可するならと返した。パエスは移動魔法が使えていざというとき逃げれるし、ぼくは一応司令塔かつ恋人だからだね。ミドとトモナミを連れてこなかったのは、戦いになっても多分敵わないからだ、フジコさんの見立てなら間違いない。逃げに徹したパーティだ。

 さて話ってなんだろうね。仲の悪いもの同士、良い話ってことはないと思う。内密ならなおさらだよ。あ~あ、次から次にやになっちゃうよ。


「待ちな」


 僕たちの行く手を阻むように、ミイラが姿を現した。ミイラっていっても、引き締まった体をしてて、手でナイフをジャグリングしてる。あの目からすると、友好的じゃなさそうだね。


「『アサシンマミー』だよ、素早い肉弾戦が得意。今のぼくらじゃ勝てない相手だからね」

「はい」


 フジコさんが囁く。この洞察力のおかげで、今まで何度危ない所を脱出したかわからない。ぼくはパエスに移動魔法の準備をお願いして、様子を伺う。


「下がりなさい」

「できねえな」


 『レイヴンシャドー』の言葉にも、『アサシンマミー』は下がる様子をみせない。異変を感じたのか、続々モンスターが集まってきたけど、遠巻きに見てるだけだ。


「私はサルーイン様の命令でこの者たちを連れています」

「それはいい。が、人間がいるのが気に食わねえな」


 『アサシンマミー』はそう言ってフジコさんを睨む。なるほどね、人間嫌いのモンスターか。今までも、少なからずそういうモンスターに出会ったことがある。3姉妹のような人間を見下しているタイプもいれば、ひどいことをされて人間なら誰彼構わず恨んでいるのもいた。今回はどっちだろう。


 

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