第18話
どうにか、ぼくたちはそのバリアの穴に飛び込んだ。
「みんないる⁉」
「いるよ!」
「いるわ!」
「います!」
「うほ!」
「ひいいい!」
「全員大丈夫そうだね」
よかった、みんな大丈夫そうだ。遥か頭上で爆発音がする、『ひかりのや』がバリアに当たっているんだ。それでも全く揺れないのは流石だね、パエスもあれくらいできるようになればもっともっと危なくなくなるんだけど……。
「大丈夫か?」
「アサシンマミーさん?」
ぼくらに声をかけてきたのは、前に会ったアサシンマミーさんだった。
「参謀から命令されてな、きみたちを保護する」
「あ、どうも」
レイヴンシャドーさんのことだよね? 感知能力もすごい、これまで直接的な戦闘能力を挙げることばっかり考えてたけど、それだと格上相手にどうにもならない。もっとパエスとオネスも強くしてもらわないと。
「ついてこい」
そういわれて、ぼくたちはアサシンマミーさんの後をぞろぞろとついていった。みんな結構冷静で助かったよ。パニックになるのが一番怖いからね。
「戦況はどうですか?」
「五分五分だ、こっちの攻撃も勇者どもに通じん」
なるほど、相当強い相手なんだね。ここまで死ななかったどころか傷もないぼくらは運が良いなんてもんじゃない。
「……ねえ、勇者が6人もいるわ」
「6人!」
トモナミの『サーチ』で明かされた向こうの戦力は破格だ。大体勇者のパーティは勇者一人を中心に、勇者に足りない要素を補う仲間の数人だけだ。中には軍隊規模で進んでる勇者もいるらしいけど……。おまけに勇者どうしで組むなんて珍しい、スポンサーがどこかで結構張り合いとかが日常茶飯事らしいからね。でも、これで仲間も含めれば20人以上強い人間がいるってことになる、やっぱり備えてたのか。
また近くに『ひかりのや』が着弾して、近くのモンスターが蒸発した。『妖魔軍』は総崩れだ、こんな状況は初めてだし、そもそもみんな今まで好き勝手に戦って地力だけで勝ってきたから戦略とかいうものがまるでない。ここまでやられたら、立て直すのは無理だろうね。ぼくらが助けに行くわけにはいかない、そんなことしたら計画が台無しだし、普通に危ない。後は『剛魔軍』が元帥に恩を売るために動くかどうかだけど、こう接戦だと難しいだろう。
「……」
知ってるモンスターもいる、この前の駆け出し勇者くんたちはどこだろう? ぼくたちは、どう言いつくろっても、今裏切っている最中だ。そのことにあまり動揺してない、自分が嫌だ。これはモンスターになったからそうなのかな? それともこれまでの戦いで荒んだから? もしかすると、人間だったときからぼくはひょっとして……。やめよう、こんなこと、何にもならない。
今は、攻撃に加わってアピールしないと。ミドとトモナミを―
「くそっ‼」
すぐ近くの『バリアー』に、モンスターが激突した。人型だ、羽があって尻尾と―
「ヤン⁉」
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