第16話

 爆薬付きの弓矢? いや、クレーターと巻き込まれたモンスターの残骸を見る限り、そんな規模じゃない。魔法攻撃だ、それもかなりの威力の。おまけに、一人から発射された数じゃない、最低でも3人くらい、勇者つきクラスの魔法使いがいる。


「ミド! パエスを抱えてみんなを乗せて! みんなはすぐに乗る‼ 全力で後退する!」


 ミド、トモナミ、アイジャなら耐えられるくらいの魔法だけど、ほかの皆じゃとても無理だ。パエスの『バリア』じゃ数発が限界、なにもない状況じゃフジコさんは勿論、ぼく、オネス、なんか一発で消し炭になっちゃう。

 今は後退して、射程の外に出る。連発できるなら、攻め方を変えないとダメだ。的になりにいってるようなものだもの。味方は……ダメだ、さっきので混乱して無意味に暴れてるか、関せず突っ込み続けるかの二つしかない。言っても聞かないだろうし、乗せる数を決められない。

 あ、『剛魔軍』は軍全体に大きな『バリアー』を張って進んでる。やっぱり経験が違うね。待てよ、却ってあそこの方が安全かもしれない。それにこのまま逃げると目的の一つ、手柄を立てるのが難しくなる。いやいや、それよりみんなの安全がまず大事だ、考えろ、どっちが生き残れる? 逃げるか、『剛魔軍』との合流か。


「乗ったよ! お兄ちゃん!」


 ミドの声がかかる。同時に、バリアに魔法が着弾した。大きな音と衝撃が木霊する。オネスが悲鳴をあげてジャイアに飛びついた。フジコさんは、パエスにモンスターの能力値をあげる『ドリーミング』を掛けてくれてる。


「データコウシン……『ひかりのや』っていう魔法攻撃だって!」

「光属性の攻撃だよ! かなりの上級魔法だね!」


 トモナミが叫び、フジコさんが解説してくれた。やっぱりそうか、範囲は両軍を完全にとらえる程で、ぼくらはその中間の位置。『剛魔軍』は最前線……。よし。


「ミド、『剛魔軍』の『バリア』に向かって行くよ! 全速全身‼」

「あれのこと⁉ わかったよ!」


 『剛魔軍』にする。距離が近いし、フジコさんがいるんだ、そう悪い扱いはされないだろう。あの『バリア』なら安全だ、さっきからたくさんの『ひかりのや』が直撃してるのにビクともしてない。


「しゅっぱ~つ‼」


 ミドがぼくらを乗せて、戦場を横切る。『妖魔軍』のみんなは、降り注ぐ魔法に対応できてない。


「うわっ!」


 2度目の衝撃が襲い掛かる。また、当たったんだ。


「お兄ちゃん平気⁉」

「ぼくはいいからミドは飛ぶことに集中! パエスは平気⁉」

「へ、平気よ……」


 嘘が下手だよ。もって2発……いや、一発だろう。フジコさんが『ドリーミング』で補助してくれていなかったら、とっくに『バリア』は破られてた。


「お、おおお俺はどうしたらいい⁉」

「ジャイアにしっかり捕まる! ジャイアはみんなをしっかり抱きしめて! 落としちゃダメだよ!」

「うほ‼」

「お兄ちゃん‼ もう着く‼」


 ミドの声に顔を上げると、『剛魔軍』のバリアがもう目の前まで来ていた。


「よし! そのまま突っ込む!」

「うん!」

「え⁉ 待って―」


 ミドが、さらに加速する。そして、バリアに突っ込んで、弾き返された。

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