第9話
「こちらとしては……」
「ボクは……」
兵舎の中で、ドルーインとハスボン、レイヴンシャドーとフジコさんが話している。せめてエスパを入れたかったけど、ダメだった。
残り物のぼくたちは、外で話が終わるまで待たされてる。念のため、トモナミとエスパに周囲を警戒してもらってる、3姉妹は勿論、誰かに見られて報告でもされると面倒くさい。
「なんか、すまん」
「いえいえ」
アサシンシャドーがミドに抱っこされてる生首のぼくに頭を下げる。このひと……モンスターによると、さっきのことは命令された事らしい。やっぱり、腕試しってことかな?
「お兄ちゃん、平気?」
「こうなると再生するより新しい体にくっつけた方が早いかもね」
よくよく考えると、そうやって強い体にしたほうがぼく早くつよくなれるんじゃないだろうか? でもきっと使い方で戸惑うんだろうな。
アイジャとツインオーガはお互いに吠え合ってる、オネスが怯えてこっちをちらちら見てるから、通訳不能なんだろうけど仲よさそうで何よりだね。
「お待たせしました」
兵舎からレイヴンシャドーたちとフジコさんが出てきた。
「待ってるわよ」
「手をこまねいてるわよ」
「じゃあな、すまんかった」
「わたくしからも、申し訳ございません」
ハスボンとドルーインに代わって、レイヴンシャドーとアサシンマミーが頭を下げる。そういう性格なのか、ぼくらを下に見てるのか、この小人たちは要注意かな。
「気にしてませんよ」
「うほっほ!」
「-‼」
「-‼」
意気投合したのはいいけど、ジャイアにはこの声をどうにかしてもらわないとね。
レイヴンシャドーの移動魔法に包まれて、剛魔軍の一団は消えた。トモナミとエスパに声をかけてぼくたちは兵舎に戻り、フジコさんから会議の内容を教えてもらった。
「引き抜きの勧誘だったよ」
「やっぱり」
ここまでは予想通りだけど顔をみると何かしら問題がありそうだ。
「ボクだけを希望してるんだ」
「よっしゃ!」
「さっさと消えちめえ! 雌猫が!」
「永い間、お世話になったわ」
「きみたちは静かに」
ぼくはミドらを宥める。すぐ興奮するんだから。
「それはフジコさんの力だけってことですか?」
「うん、レイヴンシャドーの子はきみのことをすごく評価してるんだけど、『ちび将軍』の2人があんまりね。知略方面に興味はないみたい」
『剛魔軍』っていうくらいだしね。やっぱり素の力がなんぼなんだろうか。そうすると、フジコさんを狙ってるのはもっと上のモンスター? ミドとトモナミくらいは注意をひけるかもと思ってたけど、甘くないね。
「みんなとじゃないと行かないっていってはあるんだけど」
「じゃ、じゃあ大丈夫じゃないか?」
「どうかな」
安心した声を出しているオネスだけど、ぼくはそう思わない。
「入った後で、引き離されちゃうかもしれないよ。おまけなんだから」
「ひいい!」
「それに、パマちゃんや元帥に話は全然通してなかったよ。どうするつもりかって聞いても、大丈夫大丈夫ばっかりでね」
「う~ん」
どうしたものだろう。ぼくは移籍自体は賛成したい、今の待遇はそんなによくないし、向こうからの話ってのも大きい。それなりの用意はしてあるだろう。
けど、そうすれば当然『妖魔軍』とは決別だ。その前に、あの元帥がなにか仕掛けてくるかもしれない。ぼくらが要らなくてただ手元に置いてるだけだったら、渡すよりもいっそ……なんて怖い考えになってもおかしくない。ドルーインたちの話からすると、フジコさんを引き抜けっていう指令を出した上層部が根回しをしているんだろうけど正直あの元帥にそういう面で勝てるかな? フジコさんの立ち位置がよくわからないのもなあ。
なにより、ぼくらが数に入ってないのが重大だ。オネスにしたように、フジコさんだけもらってポイされちゃう可能性もあるし、その前にフジコさんだけもっていっちゃうかもしれない。最初に比べれば強くなったけど、フジコさんなしでこれからやっていく自信はないよ。
「……ヘキサの戦いで、戦果をあげたいですね」
「? どういうこと?」
「ドルーインとハスボンが地の強さにしか興味ないなら、それを見せるかしないってことだよトモナミ。みんな、できるだけ強くなって注目される」
「さすがお兄ちゃん!」
「レッツ人型!」
「うほーっ‼」
ああ、その明るさが今は勇気づけられるよ。
自分で言い出しておきながら、ぼくは作戦の大雑把さにあきれていた。けど、それ以外にどうしようもない。
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