第4話 姉はイイぞ~!!
「おい好郎…!!何だその格好は!?」
自宅の玄関から出た愛志を待っていたのは紛れも無く
先程マイアとか言う銀髪褐色巨乳美女にさらわれた
親友の『姉歯好郎』であった。
但しあの時と服装が違う。
襟や胸に階級章や勲章の様な物を着け
学ランとは違う詰襟のその服は何となく軍服を連想させる。
そして肩から腰の辺りまでの短めのマントを纏っていた。
少し遅れて密と薫も愛志の横に到着した。
「よう愛志…念願の妹が出来て良かったな」
好郎は普段と変わらぬ様子で話しかけて来る。
だが何だろうこの違和感は…愛志にはとても嫌な予感がしていた。
そしてその予感はすぐ確信に変わった。
まさに今、好郎の両脇に二人の女性が現れたからだ。
特に右側の女性には物凄く見覚えがある。
「ウフフフ…坊やにお嬢ちゃん達…さっき振りね~」
「…お前は…好郎をさらった…!!」
フフンと鼻を鳴らしこちらを見下した態度を取る銀髪褐色巨乳美女は
あの
「…お姉ちゃん!!」
好郎の左側に控えるローブを深々と被った女性を見て密が声を張り上げる。
「お…お姉ちゃん!?」
密に問いかける愛志、驚きの余り声が裏返ってしまった。
「はい…お部屋での会話が途中でしたのでお話し出来ていませんでしたが
『姉』の魔導書は私の姉…『
女性はフードを自らはぐると密によく似た顔立ちが現れた。
但し目付きが鋭く神経質な印象。
眼鏡も妹の密とは違い角ばった細いタイプの物を着用している。
右手には『妹』魔導書同様の分厚い本が抱えられていた。
あれがきっと『姉』魔導書なのだろう。
「密…あなたはいつも姉である私の先を行くのね…
魔法の才能も上…学力も上…おまけに人にも好かれて…
今回だって魔導書の
本当に忌々しいわ…」
淡々と言葉を発する
「お姉ちゃん…?何を言っているの…?
私達今迄仲良くやって来たじゃない!!」
信じられないと言ったように目を見開き声を震わせる密。
「…フフ…でもこの劣等感にまみれた人生もここでお終い…
あなたもろ共その男を殺して私がシステシアの筆頭魔導士になるの!!
…フフ…アハハハハ!!」
右手で顔を覆いのけ反りながら高笑いを始める秘女。
口角が上がりきっていてとても正常な精神状態に見えない。
それを見て足元がふらついた密を愛志が支える。
「大丈夫か?」
「うん…大丈夫…ありがとうお兄ちゃん…」
口ではこう言っているが、実の姉の自分への憎悪と殺意の籠った言葉を聞いて大丈夫でいられる訳が無い。
「あ~…そろそろ俺にもしゃべらせてくれないかな?」
「はっ…!!失礼しました」
好郎が口を開くと両脇にいたマイアと秘女は即座に膝ま付く。
「好郎…お前…」
ギリリと奥歯を噛み好郎を睨みつける愛志。
「愛志…お前もその嬢ちゃん達からある程度の話を聞いてるだろうから
ズバリ言うけど…俺はビッグシスターマスターの魔導書の
好郎はヤレヤレといった感じに両掌を上に向け肩をすくめて見せた。
「そうか…密が俺に、さらわれた好郎には命の危険が無いと断言していたのはこう言う事だったのか…あの女はお前を『姉』魔導書の契約の為にさらったと…」
「そう言う事だな、物分かりが良くて助かるぜ
おっと!最初に言っておくが俺は洗脳されていたり弱みを握られてたりはして無いぜ?契約にも自分の意思で同意した」
確かに好郎からはおかしな所は見受けられない。
「しかし何故だ?お前と俺は付き合いも長いし、女の好みも随分と語り合ったがお前が姉属性だなんて一度も聞いていないぞ!!
俺が知る限りお前はネコミミメイド少女が好きだったはずだ!!」
シリアスな場面でこれはどうかと思うが
愛志はふざけている訳では無く至って真面目に好郎を問い質した。
「…実は俺にも自分に姉属性が有ったなんてこれっぽっちも思っていなかったのさ…
だがさっきマイアともつれあった時に確信したのんだ…
年上のお姉さんはイイ!!尊いと!!!」
拳を握りしめ熱演する好郎。
「…そうか…ならば仕方ない…他人の…いや親友の性的嗜好にダメ出しをするほど俺も野暮じゃない…だがな!!お前には
あんなに可愛い妹がいて何故
こちらも負けてはいない、熱い思いの丈を好郎にぶつける愛志。
茜とは『
「それだ!!あの妹の茜が同年代や年下の可愛い系の女の子への幻想を全てぶち壊したんだ!!兄である俺を全く敬わないし、タメ口どころか汚い言葉遣いで罵倒はするわ、意味も無く殴る蹴るとやりたい放題、
そのくせ小遣いが足りなくなれば猫みたいにすり寄って金をせびるわ
もううんざりなんだよ~!!!」
ブワッと好郎の目から血涙が溢れだす。
「…好郎…お前…そこまで…」
「それはご褒美じゃないか」とはさすがに言えなかった愛志であった。
これはあくまで愛志の価値観であって一般的ではないからだ。
「もういい!!所詮お前には理解できまい!!そもそもここに来たのは
お前らを倒す為だったんだからな~!!」
好郎は秘女から『姉』魔導書を受け取ると呪文を唱えだした。
「サモン!!マイビッグシスター!!来たれ!!魔女よ!!」
好郎の足元とその隣に二つの眩い光を放つ魔法陣が現れ回転を始める。
やがて隣の魔法陣の上に光る人物のシルエットが出現、
光が飛び散り姿を現した女性は
胸元が大きく開いた紫のレオタードを身に纏い、頭にはてっぺんの尖った帽子、右手には先端に大きな水晶玉の付いた杖を持っている。
長い黒髪を掻き上げ血の様な真っ赤な瞳でこちらを見やる。
まるで妖艶な魔女その物だ。
「おお!これはワシ好みの若い男じゃな…どれ一つ味見といこうか…」
艶めかしい容姿とは裏腹に高齢の女性が使う様な言葉遣いで話す
その魔女はツカツカと好郎に近づくといきなり唇を奪った。
「んんんん????…んんんん!!!!」
好郎が窒息してしまうのではないかというくらい濃厚なキス。
みるみる好郎の顔から血の気が引き力が抜けていく。
「…ふう…中々上手かったぞ…久し振り故手加減が出来なかった…許せ」
「…はは…へへへへ…」
ヘナヘナと地面にへたり込む好郎。
これは危険じゃないのかと言う位ぐったりしている。
「我が名はドラクロア…契約によりお前たちを抹殺する…覚悟は良いな?」
ドラクロアと名乗った魔女はこちらに水晶の杖を向けて来た。
「チクショウ!!戦うしかないのか?」
身構える愛志達。
閑静な住宅街で『妹』VS『姉』の戦いの火蓋が今切って落とされた。
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