ブッシャリオン設定コラム「PDDシリーズ」

※ブッシャリオン現行最新話までのネタバレを含みますのでご注意ください。


 本編中、『PDD』と呼ばれているのはプラン・ダイダロス並びにそれに付随する研究機関が開発を行い、惑星移住に伴う「工事」、つまりは惑星環境の改造のために使用されることを想定したツール群である。封印兵器(シールドウェポン)と呼ばれることもあるが、公的な扱いとしては兵器ではない。

 しかし、惑星を改造するレベルの道具はともすれば人類を滅ぼす兵器ともなるのは紛れもない事実であることから、国際条約に基づく規制対象となり、地球圏での使用が原則禁止されている。が、アフター徳カリプス(AT)時点においては条約締結に関与した団体は当のプラン・ダイダロス以外は事実上消滅しており、規制は有名無実化している。


PDD-001『ジュエル』

 軌道爆撃パッケージ。開発コードは『ティアジュエル』、名称としては『ジュエル』と呼ばれる。

 軌道上からの質量攻撃の歴史は古く、人類が宇宙利用を始めた当初から議論されてきた歴史がある。しかし、単なる広域破壊ではなく、軌道爆撃をシステムとして洗練させ、小天体を原料として加工することでローコストかつ精密な破壊を実現した、という点がこのシステムの本質である。

 とはいえ、『ジュエル』自体は元々は軌道上からの物資投下、輸送システムに付随した機能の一部であり、本来の使用目的は資源小惑星等のリソースを地上に供給する物流システムである。なので或る意味、「お急ぎ便」がお急ぎ過ぎた結果、地上にクレーターを作っているだけ、とも言える。

 人類最盛期基準の技術力では軌道上からの落下物の迎撃は比較的容易であり、有効打とするためには突入軌道の垂直化、ランダマイズや飽和攻撃が必要となる。



PDD-002『ミラー』

 開発コードは『アルキメデスの鏡』。その本体は複数の球状人工天体である。展開時には光を収束・透過するフィルムを展開し、人工天体を中心とした巨大な鏡の集合体となる。

 その目的は、テラフォーミグ対象天体における恒星光不足を「物理的に補う」こと。これにより、極寒の惑星であっても人類の居住可能な環境に改造できるとされる。

 人類の文明の極致とも言えるメガストラクチャではあるが、使用法次第では惑星表面へ核兵器の爆発に匹敵するエネルギーを常時注ぎ続けることのできる悪魔の兵器とも化す。


 自律的な姿勢制御機能はあるものの、不完全状態の展開では、潮汐力や本体が受けた光圧等で焦点にずれが生じ、展開した瞬間から分解を始める儚い存在であるが、完全な状態では恒星軌道に浮かぶリング状構造物となり、恒星風による影響を相殺する「安定した構造」となるよう設計されている。


 プラン・ダイダロスより流出(提供とする説あり)した試作品が、嘗てアフリカ大陸における戦争で戦略兵器として投入され、現地の気候・生態系に不可逆なダメージを負わせた。おかげでAT時代のアフリカの一部は恐竜天国になってしまっている。こうした経緯から、PDDシリーズの規制の発端ともなった存在でもある。



PDD-003『クサナギ』

 秘匿名『ソード』。葉緑体に作用する人工微生物である。

(※カテゴリとしてはウィルス、細菌に近いが、ナノマシンと言えなくもない)

 人間をはじめとする動物には無害であり、植物を枯らす、という作用しかない。が、その意味するところは惑星陸上生態系の完全破壊である。本来の開発目的は、移住先環境のテラフォーミグ、生態系構築失敗に備えたリセットスイッチ。

 地球上で使用された場合、待っているのは人類の滅亡である。この兵器のみ、本質とは関係のない呼び名を充てられているのも、その凶悪性に起因する。

 元々は、木星人(ジュピタリアン)が地球との限定戦争に向けて開発していたものである、という説もあり、出自に不明な点が多い。



PDD-004『ワンド』/仮称『タンホイザー』

 未完成。開発コード『アメノヌボコ』。

 現段階では「地上人類の行使する『奇跡』の再現」「母艦炉心からのエネルギーの伝送」に留まっているが、その最終形態は、広義のブッシャリオンの空間相転移現象(徳カリプスと同等のもの)を利用した、一種のワープゲートである。

 移民船団の最終目的は人類の播種、人類圏の拡大であり、そのためには複数の人類圏が相互に連絡可能でなければならない。のだが、技術的難易度や炉心の暴走事故等の都合から、メインプランとしてはほぼ放棄されている。

 AT時点で、今のままでは実現に百年程は度必要な見込み。

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黄昏のブッシャリオン短編集 碌星らせん @dddrill

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