エイプリルフール企画

黄昏のブッシャリオン(グッドスター版)

 アフター徳カリプス、14年。それは、じんこうてきに生み出されたメキシコだ。徳エネルギーというぶんめいに頼りすぎたお前たちは、そのデメリットに目を向けようとせず、タフであることを忘れてしまった。まつさえ「これさえあれば人生オールハッピー!」などと抜かすしこうていしを犯してしまった。

 その結果、世界はメキシコになってしまったのだ。かこくなメキシコに耐えられず、じんるいの7割があの世でのバカンスヘ旅立ち、残りの半分はメキシコの路地裏で屍をさらした。

 だが、お前はまだこの先に起こったことを知らない。人類に愛想を尽かしたルンバが、お前たちを襲い始めた。しかも善意でだ。これを得度兵器と呼ぶ。こいつらは、人類全員をバカンスに送り出そうとしているのだ。

 俺もバカンスに行きたいが、まだ書くべきテキストが山のようにあるので行けない。


 とにかく、メキシコの中で生きている人類の中には、かろうじてタフな奴らも幾らかいる。俺は、そいつらの話をしていくつもりだ……。



「クーカイ!これを見ろ!」

 こいつの名前はガンジーと言う。ぶっきょうとは全然関係ないので、多分何かの間違いで付けられたのだろう。

「ホンモノのソクシンブツだ……」

 ガンジーと一緒に、廃寺をとうくつしていたコイツの名前は、クーカイという。バンデラスほどではないにせよタフな男だが、ところどころ腰抜けだ。

 こいつらが見ているのは、アワレなレクター博士とかのぎせいしゃではない。神秘的な穴の奥にちんざしているのは、ボンズがひものになったものだ。

 何故干物になるかは、俺はしんけんなブディストではないのでよくわからない。たぶん、縁側でじっとたいように当たりたいとか、そういうきもちの延長なのだろうと俺は思う。

 だが、これはただの干物ではない。アフター徳カリプス世界において、なにより貴重な徳エネルギー源……つまり、俺にとってのドリトスのようなものだ。これを断たれては、いまや徳エネルギーぶんめいの残滓で辛うじて生きながらえる人類は、死ぬしか無い。

「……バチ、当たらねぇかな」

 ソクシンブツを運び出しながら、ガンジーはそうつぶやいた。コイツにも、こんなことを気にするこころが残っていたのだ。

 言い忘れていたが、クーカイはともかくこいつは徳が低いので、徳エネルギーをあまり出せない。

「この僧侶も、役に立って喜んでいるさ。気にするな」

 そのとおりだ。タフになれ。

「……そうか」

 二人は、ソクシンブツを車につみこみ、廃寺を後にした。次なる採掘ポイントへ向かうためだ。


 浄土は遠く、バカンスも遠い。そういうせかいに、彼等は生きている……

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