第35話「田中ブッダ島浮上!ブッシャリオン出撃せず!」

▲『得度機兵ブッシャリオン』これまでのあらすじ▲

第33話「ブッシャリオン戦闘記録」

 ダンジャリオンによって破壊されたブッシャリオン。その修復のため、ミラルパ博士はブッシャリオンの過去の戦闘記録を振り返る……敵の猛攻に対し、彼が見出した結論とは。


第34話「出撃せよ、新たな力」

 徳エネルギー研究所を得度兵器獣が襲う。立ち向かうは新たな力、その名を「ブッシャリオンG」。圧倒的な力を見せつけるブッシャリオンG。だがその始動は、田中ブッダ帝国の最終計画の幕開けでもあった。


▲番外▲劇場版「星から来たクーカイ」

 第32話から続くifストーリーを描いた劇場版。未知の敵、クーカイ星人の魔の手から地球を守るため、TV本編に先駆けブッシャリオンGが出撃する。本編とはブッシャリオンGの登場経緯が異なるため、混乱を招いたとされる。


▲これまでのあらすじおわり▲


第35話「田中ブッダ島浮上!ブッシャリオン出撃せず!」


「本拠地の場所がわかったのか!?」

「良いところに来たな、ガンジー、クーカイ」

 徳エネルギー研究所の大スクリーンの前には、ミラルパ博士や防衛軍幹部が集まっている。そこへ駆けつけるガンジーとクーカイ。

「海中要塞田中ブッダ島が浮上しているところを、巡視船が発見したのです」

「相変わらずひでぇデザインセンスだぜ……」

「問題は、その場所なのです」

 と、防衛軍の男が告げる。

「田中ブッダ島は折り悪く、領有を巡って複数の国が争っている海域に浮上しています。これでは、迂闊に軍隊を出撃させれば戦争が起こりかねません」

「……他の国との折衝は?」

「無論進めています。しかし、時間がかかるかと……」

「……なるほど、その間に何かやらかそうってぇ腹か」

「恐らく、そうだろう」

「博士、つまり俺達の出番ってことだな?」

「申し訳ないが、ブッシャリオンには交渉が終わるまで出撃しないで頂きたい」

 だが、防衛軍の男が言葉を遮る。

「テメェどういうことだ!」

「待て、ガンジー!ステイ!」

「そういうことだ。……すまんが、耐えて欲しい」

「研究所には国の補助金も出ているのです。どうか、ご理解頂きたい……」

「モゴーッ!モゴゴーッ!」

 ガンジーはクーカイに取り押さえられたまま暴れている。

「プハーッ!窒息するかと思ったぞ!」

 防衛軍の男が去った後。少し落ち着いたガンジーをクーカイがようやく放す。

「そういうわけだ。俺達が今動けば、国際問題になる」

「でもよぉ!軍隊が出ても勝てねぇだろ!」

「……無論、準備はする。それに、防衛軍にはブッシャリオンの量産試作機がある」

「博士、まだそれは」

「なんだそれ、聞いてねぇぞ!」

「いや、この際だ……ガンジーにも話しておいた方がいいだろう。実は、ブッシャリオンはかねてから量産計画があってな。名前は、γシャリオン。トライ仏舎利ジェネレータこそ積んでいないが、得度兵器獣にも易易と負けることはあるまい」

「俺達が、いらなくなるってのか」

「……そうではない。ブッシャリオン一体で徳カリプス帝国の侵攻を凌ぐという今までが、そもそも歪だったのだ」

「ブッシャリオンGは強力な力だ。だが、一人では脆い。わかるよな、ガンジー」


----------


「そうだ……だから俺達が、ブッシャリオンチームなんだろ」

 人気のない公園で、ガンジーはブランコを漕いでいた。出撃を禁じられ、自分の存在意義を見失った彼の前に、黒服の男達が現れる。

「ブッシャリオンのパイロットだな」

「博士からの依頼で迎えに来た」

「我々と共に来て欲しい」

「そうか……もう好きにしてくれ」

 今のガンジーには、突っ掛かる気力も残されては居なかった。

「物分りが良くて助かる。では……グワーッ!」

 だが、そこで黒服の一人が倒れ伏す。他の黒服達が一斉に辺りを見回し、銃を構える。

「見損なったぞ、ブッシャリオンのパイロット!」

 公園の滑り台の上に、仮面の女が立っていた。

「あんたは……!αシャリオンの!」

 ブッシャリオンの窮地に、稀に現れる謎のロボット。そのパイロットが彼女なのだ。

「お前の心構えは、その程度のものなのか?悪に立ち向かう志は!」

「そんなこと言ったってよ……もう、俺じゃなくていいんだ」

 そう。もう戦うのは、彼でなくても良い。いや、最初から、『誰でも良かった』のかもしれない。

「もっと頭が良くて、強いやつは幾らでも居る。そいつらが、何とかしてくれるさ」

「……お前は、それでいいのか?」

「ああ」

「田中ブッダの最後の企てが、もう間近まで近付いているとしても」

「最後……?」

「それに。今まで戦ってきたのは、お前だ。ならば、『お前でなければ駄目だ』という者は……どうなる?」

「ガンジー!」

 公園の外から、ガラシャが駆け寄る。

「急に出て行っちゃったって、博士が……だから、私」

「……おい!どういうことだ!」

「ガンジー?」

「……今の私に出来ることは、此処までだ。今は一刻が惜しい。次は、田中ブッダ島で会おう」

 仮面の女は、そう言い残して姿を消した。

「おい待て!」

「とにかく、ここから逃げないと!」

 ガラシャがガンジーの手を引き、公園から去ろうとする。

「……もしかして、俺を探してたのか?」

「……そうだよ」

 ガラシャは、少し俯きながら答える。日はもう沈んでいる。

「……そうか」

「……これからどうするの?」

 微妙な空気を誤魔化すように、ガラシャが問うた。

「そうだなぁ……戦うしか、無いんだろうなぁ」

 田中ブッダ男爵が、何かを企んでいる。それは間違いない。

 だが、どうやって?

「ブッシャリオンGはどうなってる?」

「研究所は、防衛軍の人達が……」

「そうか、だよなぁ……」

 ガンジーまで見張られていたのだ。恐らく、研究所が迂闊な動きをせぬよう、防衛軍の監視が張り巡らされているに違いあるまい。

「いっそ、ブッシャリオン盗んで出撃するか……でも、パイロットがなぁ」

 流石に、今度ばかりはクーカイも付き合ってはくれまい。ガラシャを巻き込むわけにも……

「私も行く!」

「駄目だって!」

「大丈夫!私、逮捕されても少女Aだから!」

「そういう問題じゃねぇだろ!まだお前は子供だ!」

「で……でも!もうすぐ、結婚はできる歳なんだよ!」

「そういうのやめろ!あーもう!連れてきゃいいんだろ、連れてきゃ!」

「やった!」

「但し、俺が!お前を!攫った!誰かになんか言われたら、そういうことでな!」

「うん!」

 元気よく返事するガラシャ。

 絶対そうは言わないだろう、と内心思いながらも。

「……でも、ありがとな」

「何か言った?」

「なんでもねぇ」

 そう呟くガンジーであった。


---------


「……遅かったじゃないか」

「クーカイ!」

「一体、こんな夜中に何をする気だ?」

 徳エネルギー研究所の前には、仁王立ちするクーカイの姿があった。

「聞かずともわかる。大方、ブッシャリオンGで勝手に出撃する積もりなのだろう」

「やっぱ、バレてるよなぁ……」

「ガンジー!しっかり!」

「……ならば、俺がどうするかも分かるな?」

「もちろん、そうなるよなぁ!」

 拳を握るガンジー。構えを取るクーカイ。当然、クーカイは止めようとするだろう。場合によっては、暴力に訴えてでも。

 ガンジーとクーカイの腕が相手目掛けて振るわれる。

 ガンジーの拳が空を掠め、クーカイの拳が


 ガンジーに背後から襲いかからんとしていた黒服へ叩き込まれた。

 人体を殴った時とは異なる、「ゴーン」という金属音が鳴り響き、黒服が倒れる。剥がれたカツラの下から、金属製のパンチパーマめいた髪型が姿をあらわす。

「……どうやら、防衛軍の中に、徳カリプス帝国のスパイが紛れ込んでいる」

「人間じゃねぇのか……?」

「得度兵器獣の亜種だろう。ブッシャリオンGが敵の手に落ちる可能性がある、というなら。大義名分も立つ」

「クーカイ……!」

「残念ながら、お前の読みは外れだな」

 そう言って、クーカイは笑った。

「ようし!チーム・ブッシャリオン!出撃だ!」

 三人は、研究所内へ向かって駆け出す。戦闘の末、どうにか黒服達を退けながら、ブッシャリオンの管制室へと辿り着く。

「……来たか」

 そこには、管制室内を制圧し終えたミラルパ博士の姿があった。

「爺さん、滅茶苦茶強ぇな……」

「ラマ拳の達人だそうだ」

「今は一刻が惜しい。出撃準備!」

「出撃準備完了!」「完了です!」「……よし、完了!」

 三人はブッシャリオンのコクピットへ乗り込む。

「これより状況を説明する。田中ブッダ男爵は、人類絶滅のための最終作戦を開始した。研究所を封鎖している防衛軍を排除し、田中ブッダ島へ侵攻。なんとしても作戦を阻止せよ」

「博士、その情報、もしかして……」

「……昔の教え子の話だ。信じられる」

「……そうか。なら、やるっきゃねぇな!」

「ブッシャリオン・ゴー!」

「ガラシャ!台詞取るな!」

「痴話喧嘩はそこまでだ!行くぞ!」

「してねぇよ!」


(田中ブッダ島へ出撃するブッシャリオンGと共にOPが流れる特殊エンディング)

得度機兵ブッシャリオン▲第36話「激闘!最果ての島!」ヘブッシャリ・オン!

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