設定資料

ブッシャリオン設定コラム「人工衛星網」

 ブッシャリオン世界の人工衛星網は、基本的に管理・運営が完全に自動化されている。本来は補充も軌道塔『カーリ・ダーサ』からの放出で自動更新だが、徳カリプス余波で軌道塔が崩壊したせいで更新が行われず、十五年で徐々にネットワークに穴が空いている。

 低軌道以下の商用衛星は安い放出コストと高い軌道使用料の関係で、数年でニーズに合わせて更新がデフォルト。技術進歩が一段落しても、性能向上の恩恵を受けるために早い交換周期が続いている。店の入れ替えが激しい繁華街、容積率限界までビルを立てる都心の一等地みたいなイメージ。

 徳カリプス時の余波で上層大気が撹拌されたため、当時衛星通信網の主役であった極低軌道の衛星コンステレーションや成層圏プラットフォーム群が壊滅。低軌道通信衛星も制御を失い歯抜け状態。他、高機能化とバーターで短縮された設計寿命が仇となり、高い軌道位置にある人工衛星も順次寿命を迎えている。

 現在生き残ってるのは、基本的には「コスト度外視で作られた」非常通信網の類いだが、一般人にはアクセス法がわからない。

 むしろ深刻なのは、このアクセス方法がわからないという点で、静止軌道上のサーバー衛星等に繋げれば、まだまだ通信等のバックアップを受けられるはずなのだが、技術進歩でいわゆる「エンジニア」の人数が激減し、AI等の対話インターフェースの補助なしで機械を扱える人間が希少となった結果、機械知性のサポートを得られなかったことが社会の破綻に繋がっている。


 現在、生き残っている通信網としては、トリニティ・ユニオンが建造した衛星ネットワーク(単純に保有衛星数が多かったのでまだ使えるものも多い)、旧太陽系開発機構系(通信用というより、惑星間航行のためのナビゲーションシステム)等があるが、歴史的経緯から所有者不明となっているモノ、或いは回収困難なデブリを偽装することで意図的に秘匿されているものも多く、総体の把握は困難である。


 総じて、徳カリプス後の人類には、空を見上げる余裕などなかった、ということなのかもしれない。

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