第32話「戦慄!黒いブッシャリオン」

「研究所に田中ブッダ男爵が接近している。ブッシャリオンチーム、出撃だ!」

「了解だ、ミラルパ博士!」

「ブッダゴー!!」

「ブッダゴー!!」

「ブッダ・ゴー!!」

 徳カリプス帝国と戦うため、徳エネルギー研究所から発進する三機の重戦闘機メカ!

「行くぞ!クーカイ!ガラシャ!」

「「「ブッシャリ・オン!!」」」

 掛け声と共に、戦闘機が合体変形し人型のロボットが現れる。黄昏に立つ重巨人。その名は、ブッシャリオン。その決戦形態、ブッシャリオン1である。

「行くぞ、半仏野郎!ブッシャリオンが相手だ!」

「気を付けろ、ガンジー!相手の様子が違う!」

「いつもの得度兵器獣じゃないの!?」

 夕焼けを背に、ブッシャリオンに向かう、そのシルエットは。

「黒い、ブッシャリオンだと……!」

『フハハハハ!この機体はダンジャリオン!愚かなる人類を断罪するものだ!』

 田中ブッダ男爵の笑いが響く。

「人類を断捨離するなんて許せない!」

「おのれハーフブッダマスクの男!人類は俺達が守る!チェンジ・ブッシャリオン2!」

「おい、俺はまだ攻撃してねぇぞ!」

 ガンジーの抗議をよそに、ブッシャリオンは姿を変える。

「シャリオン・ブレイザー!!」

 高速形態・ブッシャリオン2の腕に徳エネルギーが蓄積され、光り輝く破壊の拳が振るわれる。


 だが!

「何!」

「ブッダブレイカー!!」

 ダンジャリオンも腕を構える。

 2つの巨人の豪腕が交差し、腕が砕ける。

『シャリオン・ブレイザー発射時、徳エネルギーを纏ったブッシャリオン2の腕は衝撃に対し一瞬もろくなる!フハハハハ!弱点は研究済みだ!』

「くそっ……!研究してやがる!」

「ブッダニウム合金が持たん!!」

「チッ……一撃勝負しかねぇ!任せた!!」

「うん!ブッシャリオン3!」

 ブッシャリオン2は破壊された両腕を棄て、決戦形態たる両足キャタピラのブッシャリオン3へと更に姿を変える。

「徳エネルギー充填120%!トワイライト・フルバースト!」

『馬鹿な……!変形時の隙を、腕を犠牲にして埋めただと!』

「これで、終わりよ!」

 ブッシャリオン3の両肩に装備されたハイパー徳エネルギー粒子砲と両腕のブッダミサイルがダンジャリオンを捉える!

『徳エネルギーフィールド最大!』「させるか!」

 冒涜的火力がダンジャリオンへ降り注ぐ。

 そして、煙が晴れる。

『忘れたか……この機体は、ブッシャリオンを解析して作られた物だ』

 ダンジャリオンは、生きていた。全身にひび割れを生じさせ、顔の半分が砕けながらも、尚も立ち上げる黒い重巨人。

『お前達の攻撃は、全て想定済み、だ……』

「まだ立つっていうの!?」

 ブッシャリオンの徳エネルギー残量は、変形と必殺技の連射により既に残り僅か。

「……頼む、俺にやらせてくれ」

 それでも、ガンジーはそう口にする。

「しっかりキメろよ」「うん、おねがい」

「チェンジ、ブッシャリオン1!」

 日が、もうすぐ沈む。二体のブッシャリオンが向かい合う。

「徳エネルギー残量からして、残り一発が限度だ。ブースターも無い」

「ああ、わかってる」

 ブッシャリオン1は、トワイライトソードを構える。

「だが、俺達がバラバラじゃあ、コイツには絶対勝てねぇ」

『終わりだ、ブッシャリオン……!ドーン・ソード!』

 ダンジャリオンもまた、漆黒の剣を構える。

「……一瞬だ。一瞬を、研ぎ澄ませ」

「一瞬……」

「いっしゅん……」

 二体のブッシャリオンが地を駆ける。二つの機影が重なり合う。

 そして。一本のソードが折れ飛び、夕日に照らされながら宙を舞った。

 膝をついたのは、ダンジャリオンであった。

「ブッシャリオン・斬」

 ガンジーが低く呟く。ダンジャリオンの機体が正中線から二つに割れ、爆発する。

『馬鹿な……何故、負けた』

「お前は捨てようとした。俺達は得ようとした。きっと……それだけの、差だ」

 トワイライトソードにヒビが入り、小さな結晶となって砕け散った。同時にブッシャリオンも膝をつく。勝負は紙一重であった。

「……なんとか、倒せたか……」

「ブッシャリオンもボロボロだがな」

「うん……」

 小さな糧を得て、今日を凌いだ。だが、徳カリプス帝国との戦いは明日も続く。

 戦え、ブッシャリオン。勝利を手にするその日まで。

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