第20話 通 フレンチを語る

「フランス料理好き?」

つうが唐突に聞いてきた。

「あんまり好きじゃない」

「そうか~、やっぱりそうか~」

「なんで?」

「んん~、ちょっとね…」

なんとも歯切れの悪い顔をするつう


「そういえば、お前にボジョレーヌーボやったじゃん。アレ飲んだ?」

「おう、そんなこともあったな…なんで貰ったんだっけ?」

「お前が結婚した年と子供が生まれた年に2本づつ」

「そうだっけか?」

「1本飲むようで、1本記念にって渡したんだけど…」

「飲んだ覚えがないんだよな~、ワインなんて普段飲まないし…飲んだら覚えてると思うんだけどな~」

(いや~お前の脳みそだとどうだろうな~、ニワトリといい勝負だと思うが)


「あんまりさぁ~ワイン好きじゃないんだ」

「まぁ、大したモノじゃないからどうでもいいんだけどね」

「うん…すまん、家に置いてあるのかもな」


「話変わるけど…お前の親戚が始めたラーメン屋どうなった?」

「うん…?あれから行ってない」

(本家の長男として…なんとかかんとか言ってたのに…)

「潰れたとか…」

「いや…そんな話は聞かないね~」

「なんか、アレだったもんな…親戚っていうか…お互い微妙な顔してたよね」

「そうか…まぁ、あんまり話したことない…」

「同世代っぽかったけど…いくつなの?」

「アイツ?いくつかな~、お前より~下かな…たぶん」

(俺とお前、同級生だけど…なぜ俺基準?お前の親戚!)


「そんなこと、どうでもいい!フランス料理の話」

(そんなこと?どうでもいい?親戚を見守る…本家の長男として…って話どうした?)

「親戚とはいえ…あんまり美味くなかったじゃん」

(お前…なかなかだよ、その感じ)

「大体さぁ~、俺が行ったのに、なんもサービスなしだよ!アレじゃダメだ」

(うん…微妙な味だったし、開店直後にメニューをテープで消してるあたり…お前の親戚だなって感じはしたよ)

「潰れてもしょうがねぇよ」

(嫌いなのか…嫌いなんだな…お互い微妙な顔だったしな…なんで来るんだよ!みたいな顔してたもんな、そういえば)


「で…フランス料理、なんで好きじゃないの?」

「うん…なんか、ぬるい感じの温度で出してくるじゃん、ひと肌っていうか…あと…日本人に馴染みのない素材じゃん」

「たとえば?」

「ウサギとかハトとかエスカルゴとか…」

「あ~タヌキは食うね!」

「お前の家はな…フランス料理でタヌキ聞いたことねぇよ俺」

「あと…基本ソースじゃん…味なんてソースの味じゃん…食感以外の差が微妙」

「ソースね~、タレみたいな…」

「タレって言わないね」

「でもタレじゃん」

「うん…まぁニュアンスは解るけど」

「あとは?」

「うん、マナーを気にしちゃって…楽しくないんだよ、食っててさ」

「解る!気がする…」


「で?なんで急にフランス料理なの?」

「いや…食う前に聞いとこうと思って」

「食ってことないの?」

「ないね」

(だよな…うん…えっ?行くの?)

「行くの?」

「お前とな」

「断る!」

「だな!お前の口に合わないならしょうがない」

(違うよ…行きたくないんだよ)

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お湯ラーメン2(通) 桜雪 @sakurayuki

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