第18話 通 バイクの免許を取得する

「お疲れ様でした!お先します」

つうは最近、教習所に通いだした。

将来のために…免許を取っておく。

つうがそんなことを言っていた。


それから数か月。

「免許取ったんだ」

「おう、そうか…ところで何の免許取ったの?」

そう、興味が無かった、というか聞きそびれたというか、まぁ肝心なところを聞かなかったのだ。


「これだ!」

免許証を差し出す…普通の運転免許証?

「免許証…だね」

「違う、お前のと見比べてみろ」

言われるままに見比べてみる

「何が違うの?」

「解らんヤツだな!1が増えてるでしょ!」

「ん?………あっ!そうだね」

「だろ!バイクの免許取ったんだ」

(なぜ…今さら…)

「車に乗ってんだから、バイク要らないじゃん」

「全然解ってない!」

「風を感じないでしょ、車じゃ」

「窓開ければ」

「バカ!雨の日どうすんだよ」

「雨の日はバイクの方がどうすんだよ!風より雨を感じるだろ」

「お前と話すと…あーっ!もういい」

「お前さぁ、将来のためにとか言ってなかった?なぜ大型特殊とかじゃなくてバイクなの?お前、将来何になりたいの?」

「いや…それは、大型に乗る自信は無いしな…別にドライバーとして食っていこうとも思ってないし、そうなるとバイクくらいしか残らなかった」

「取らなくていいじゃん」

「いいの!買うのバイク」

「買うの?バイクを?今さら?車のローン親に払わせてるお前が?また、親に買わせるの?」

「親に買わせてるわけじゃねぇよ」

「同じだろ!お前がローン組むたびに、親は田んぼ売ってんだろ」

「そこまでしなくてもいいって言ったんだけどな~」

(結局、払えなくなるからだよ馬鹿!)


「で…バイク買うの?ナニ乗るの?」

「決めてないんだけどさ~中古で考えてんだけどな」

「うん…どうせコカしてダメにするんだからな」

「コケねぇよ!俺はそんなに間抜けじゃねぇ」

「お前、いつもチャック開いてるし…ズボンの股間のところ濡れてるし…だらしないじゃん…ていうか気持ち悪いじゃん」

「俺、いつも濡れてんだよね、アレ自分でも不思議…」

(不思議…じゃねぇよ)

「だから、バイトとかにも影でバカにされてんだよ」

「そうなの?アイツら!」

「俺くらいだぞ、お前をバカって直接言ってやれるのは」

「そうだな!ありがと!」

(だからバカなんだよお前…)


それからしばらくして

「おう、今日はバイクで出社するから!」

「そうか、納車か!ナニ買ったの?」

「まぁ、会社で待ってろ!遅番だから後で行くぜ!それまで楽しみにしてな」

「うん、べつに楽しみじゃないけど、遅刻すんなよ、総務から呼び出されたんだろ?」

「始末書書かされた…減給10%だって…今月」

「うん、だから遅刻すんなよ」


お昼前、つうは遅刻せずに出社した。

「おはよう」

「おう、バイクどうした?」

「駐車場に停めてあるぜ、俺のニューマシン!」

「ニューマシン?中古だろ!」

「いいの!新しい俺のバイクなの」


駐車場へ行くと単車は停まってない……。

(変だな?まさか盗まれたんじゃ!)

走ってつうのところへ戻る。

「おい単車ねぇぞ!盗まれたんじゃねぇのか」

「まさか!」

何人か付いてきて駐車場へ

「なっ!単車ねぇだろ!」

「俺のバイクあるよ」

「はっ?」

「アレ!」

通が指さしたバイク。

スクーター…古い50ccのスクーター。

「えっ?アレ…スクーターじゃん」

「そう、スクーター買った。安かった3万円」

「えっ?単車は?」

「高かった…でもバイクは欲しかった3万円予算だって言ったらアレしかなかった」

皆、仕事へ戻って行く……。

「お前さぁ、50ccなら普通免許に付いてくるじゃん、なんで中免取りにいったの?」

「だから高かったんだって!しょうがねぇじゃん」


親から金貰って、免許取って、原付買って…。

「お前、だからバカって言われんだよ馬鹿」

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