第3話 通 趣味が高じて怒られる

「アルミってさ~個性だよね」

「そうか?興味ないけどね」

「お前、車どノーマルで乗れるダセェ奴だからな~」

「俺から見れば、お前のセンスが理解できないんだよ」

つうはこの頃、カー用品店で働いていた。

「俺、アルミの仕入れ任されたんだ」

「へぇ、ピット作業どうした?」

「あぁ後輩がやってる」

「お前、資格ないもんな」

「…………」


「今度、俺の仕入れたアルミ見せてやるよ、お前も欲しくなるぜ」


しばらく経った、ある日。

「店に来いよ、アルミ入ってんだ。店内でビシッと飾ってあるからよ」

「たった5種類じゃねぇか?」

「バカ!このカタログ見ろよ!ほぼ揃えたんだぜ、店には飾りきれねぇからよ、専用の倉庫借りてくれたんだよ会社で」

「へぇ~アルミに力入れてんだな~」

「おう!バンバン売るぜ!」

「いくらくらい仕入れたんだ?」

「2000万まではいってなかったような~」

「2000万?この店、売上いくらだよ、1ヶ月で」

「良くシラネェ!」

「大丈夫か?」

「おう!大丈夫だ!売れんだよ!」


数か月後

「はぁ~、もう辞めたい」

「何が?」

「すげぇ怒られた」

「なんで?」

「アルミ……仕入れたじゃん、全然売れない……」

「だから言ったじゃん」

「みんなセンスがさ~悪いんだよ」

「売れないってことは、お前のセンスが悪いんだよ」

「倉庫に入りきらなくて、2個目の倉庫借りたの、売れねぇし会社も金払えなくて、赤字!大赤字!ボーナス全員危ねぇんだわ」

「お前のせいだね」

「……みんなに無視されてんだわ~」

(あぁ~わかる、みんなの気持ちが……)

「見に来る?アルミ」


レンタル倉庫いっぱいに置かれたピカピカのホイールの山。

「どうするんだコレ?」

「どうすんだろうな、俺もうアルミの担当じゃねぇから!わからん!」


これより数か月後、つうは店のみんなのお願いと本社の粘り強い説得により自主退職となるのである。

「人事とかの偉い人が頭下げてくるからさ~、辞めてやったよ」

(うわぁ~最悪だな)

「店でも無視しやがるし、アイツらさぁ~俺に嫉妬丸出しなんだぜ!自分達が仕事できねぇからさ~俺が邪魔なんだよな!ほら、俺すげぇじゃん!」


(一生、コレで生きていけたら幸せなんだろうな~)

「お前、数字弱いんだからさ、販売業諦めろよ、なっ!」

「そうか、ありがとな!俺、なんでもできるしな!頼っていいんだぜ、お前も!」

(幸せなんだろうな~)

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