第17話 通 師匠を求める
「人生の師って欲しくない?」
「いや別に…」
「桜雪は、1人で生きてますって感じが良くないね」
「そうか?別に1人で生きてる気はしないが」
「なんなら、俺を敬ってもいいんだぜ」
「金くれたら考えるわ」
「自分の人生に歩むべき…?進むべき…??なんか、こう、街灯的な…」
「道しるべ的な」
「そんな感じ、標識みたいな」
(標識?)
「とにかく、そういう人が身近に欲しいんだよ」
「お前って昔から、爺さんに着いていくよね」
「おう、人生の先輩だからな」
「俺が見るに、尊敬に値しないダメ人間に着いていくよね」
「お前は……まったく……そういうとこだよ……だから1人で生きてます感がでるんだよ」
「お前の言う、ひとりで生きてます感の意味が解らないが、別に見下してはいないよ、敬ってもいないけど…というか、年齢で人を判断しないよ俺は…別に年下でも尊敬できる人もいるしね」
「そうじゃないんだよ、生きてるだけで精一杯なんだよ」
「精一杯ってなんだよ!どういう感じなんだよ」
「一生懸命生きてきたってことだよ!」
「大体の人間は、一生懸命生きてるよバカ!お前の知り合いの年寄りは、一生懸命さが見えないんだよ!ワンカップを最後の一滴まで飲むことにだけ必死なダメ人間ばっかなんだよ!」
「先輩方のことか!あの人達のことを言ってるのか!」
「職安で人にジュース代をせびる、ダメ人間の集団のことだよ!」
「あの人達はな、自分の人生を若い俺たちに語って、俺たちはソレにお金を払っているんだ!せびってなんかいねぇよ!」
「なんの価値があるんだ!
「年寄りをバカにするな!」
「年寄りはバカにしてねぇよ、バカをバカにしてんだバカ!」
「俺は、誰かを敬いたいの!師匠って誰かを呼びたいの!」
「いいんじゃね、先輩方でいいんじゃね、そして、あの自販機の隅で、お前も1日過ごしてればいいんじゃね」
「仕事場でさ…年下のヤツが先輩なんだよ…」
「転職したんだからしょうがないでしょ」
「なんで、この俺が、年下のヤツに仕事教えてもらわなきゃなんないの?」
「お前が、そいつより仕事出来ないからでしょ」
「だとしても、そんなヤツに怒られるんだよ」
「出来ないからしょうがないでしょ」
「仕事教えてくれなんて言えないじゃん」
「そこは言えよ」
「だから、会話も無いんだ無言」
「うん、向こうも年上部下は嫌だろうから、お前が歩み寄れよ、年上なんだから」
「なんに歩み寄るんだよ」
「話しやすい雰囲気づくり、そうすれば向こうも寄ってくるって」
「そうすれば良かったのかな~」
(アレ…過去形だな)
「もしかして、辞めたの?」
「うん、だからまた職安行くんだ」
「あ~、ちょうどいいじゃん、先輩方もまだいるんじゃね、大好きなんだろ、あのダメな空気が」
「辞める前に、お前に話せば良かったな」
「俺のことは敬ってもらわなくていいよ、お前みたいな弟子いらない」
「あーっ!どっかに師匠落ってねえかなーっ!」
(師匠って落ちてるものなの?落ちてる時点で師匠感ゼロでしょ)
「お前の理想の師匠像が見えない」
「なんかこう…さっ…白くて…」
「あ~、うん、べつに説明いらない、興味ない」
「……………」
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