第16話 通 イベントに参加する

「ちょっと付き合ってほしいんだけど」

「どこへ」

「子育てイベント」

「俺、独身だよ」

「知ってるよ、桜雪のことで俺が知らねぇことはねぇ」

「そんなことはないだろう」


頼みこまれて、市のイベントなんだか解らないが、付いていくことになった。

お父さんのための子守り教室みたいな感じだったと記憶している。


「はい、じゃあ絵描き歌を覚えておきましょう」

今のアニメのキャラクターから昔から定番のものまで様々である。


「俺、絵心無いんだよ」

通は絵に自信は無いようだ。

「ホント、絵だけはセンス無いんだ」

(絵だけ…か?)

確かにヒドイ出来である。

「完成が書いてあるんだから、せめて寄せていこうぜ」

「大体、一緒だろ~、目が2つ 鼻があって、耳もあるし、口もある」

「顔って大体、そんなもんだぞ」

「いやだから、抜けはない」

「違うんだよ、抜けとかじゃないんだよ、似てるとか、見えるとか、が大事だろ」

「似顔絵なの?」

「まぁ、言い方を変えれば似顔絵だ」

「そう言えよ!絵描き歌ってそういうもんなの」

「こどもの頃、描かなかったか?ドラ〇もんとか、怪物〇んとか」

「あ~、描いたかもね、でも得意ではなかったよ」

「絵描き歌って、そういうヤツ向けに簡単に描けるから子供が楽しんだよ」

「いや、面白くはなかったね」


「カッパじゃないよ~アヒルだよ~」

「マジ!カッパだったのかよ…アヒルに化けるとはね~」

(ウルサイな~)

ちょっとつうの絵を見ると…カッパですらねぇよ…もはや生き物じゃねぇ。

「お前…ナニ描いてるか解ってる?」

「カッパじゃないの?」

「カッパ途中経過だろ!」

「あ~、アヒルだ」

「アヒルじゃねぇよ、コックだろ」

「アレ、コックなの?カエル人間だろアレ」

「いや、帽子被ってんじゃん」

「帽子イツでたの?」

「アッという間にトコだろ」

「なんでアレがあっという間になんだよ」

「アンパンまで行ったんだから、食パンとかでいいんじゃねぇ」

(もっともな事言った~!)

「それは、俺もそう思う…賛成だね」

「だろ、俺のほうが上手く描けんじゃねぇ」

(調子のった)

「じゃあ、なんか考えてみろよ、オリジナルで」

「簡単だぜ」

「まず棒が1本あったとさ~」

(うん)

「葉っぱだよ」

(言い切った!)

「ウソ、ウソ、カエルだよ」

(騙した?)

「ここをこうして、カエルだよ」

(ここをどうしたって?でもカエルなの)

「ミミズが出てきたカエルだよ」

(エサ?エサ与えるの)

「あんぱん好きじゃないからカレーパンを買ってきて~」

(お前、カレー好きだな…)

「アレ…カエルってしっぽあったっけ?」

(まさかの聞いてきた?)

「いや…カエルしっぽないよ…」

「やべ~、ヘビの出番がねぇ…」

「なんだ?出番って」

「ここにヘビを描くわけよ」

「よく解らないけど、最終的にナニになるの?」

「カエルがヘビに食われる絵」

「絵描き歌じゃねぇじゃん!最初からカエルじゃん、ず~っとカエルじゃん」

「うん、カエル」

「お前、さっきのコックの途中までパクリじゃん」

「アレはカエルだろ、コックじゃねぇだろ、アレがメシ作ってたら、なんか嫌だろ」

「うん、嫌だけど」

「だからカエル、でもヘビには勝てない」

「なに物語?」

「物語じゃねえよ、絵描き歌だよ」

「カエルがヘビに食われる絵描き歌?」

「カエルがヘビに食われる話」

(話って言ってんじゃん)

「カエルとヘビ、別々に描けばいいじゃん」

「お前、それじゃ、ただの絵でしょ」

(なんか、どうでもいいや)

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