第7話 通 カラオケボックスで寛大になる

カラオケボックス、なぜだろう、なぜこういうことになるのだろう。

前回の続きというか……、カラオケボックスでの出来事である。

通と同僚とワタシ~♪。

部屋とYシャツとワタシ~♪。


「あのさ、送信できないんだけど……」

私が曲を送信しようとすると、エラーになる。

しばらくしてから再度お試しください。

何度か試したが送信できない。

「ダメだ変えてもおう、イラッとする」

「お前は短気だな、2台あるんだからいいじゃねぇか、怒るんじゃないよ」

「相変わらず怒りっぽいね」


「いやコレダメだろ!」

「いいからコッチ使えよ」

しぶしぶ1台の端末を回す。


「お待たせしました~」

ドリンクが運ばれる。

歌ってたので気づかなかったが、ミルクティを頼んだのだ、ストレートティが来た。

「ちょっ!電話する!」

「いいじゃねえか、こうやれば一緒だろ」

コーヒー用のミルクとシュガーをストレートティにぶち込む、通。

「色だけだろ!しかもなんか見た目ホワイト強いよ!」

「飲めよ!美味いから」

飲んでみたが、クリープを砂糖水で溶いた味がする。

「ミルクティじゃねぇよ!マズイよ!薄いんだか濃いんだか解らない味になった」

「とりあえず飲めよ!ドリンク飲み放題だから大丈夫だよ」

「次に期待だな」


「なんだよ、お前らはいいよ、注文どおり来てんだからよ」

「だいたい、なんだよ、その赤いの!」

「トマトジュース」

通はトマトジュースを飲んでいる。

「なんか気持ち悪いよ!」

八つ当たりである。

「ちょっと代えて」

同僚のジンジャーエールと交換してもらった。

「うん、マズイねコレ」

同僚の感想である。


「梅こぶ茶頼んで」

暖かい飲み物を飲みたくなった。

「梅こぶ茶ってナニ?」

同僚が聞いてくる。

「梅風味が効いた、昆布だしのお茶」

「美味いの?」

「俺、わりと好き、飲んでみる?」

運ばれた湯呑。

「うん、味しないね」

「そうか~?」

私も飲んでみたが、うん?味がしないね……お湯だね。

「ちょっと、俺のイメージと違う」

「どれ!」

通が一口、

「アチッ!」

…………感想は?

「こんな熱いの飲めねぇ!」

…………味?


「おい!『き』押すと『い』になる……」

私が検索しようとすると端末の反応がおかしい。

「おい……『ゆ』押すと『む』になる!」

「うん、そうなんだよ……さっきから変なんだよ」

同僚が頷く。

「隣のボタンに反応するのか?」

『い』押したら『い』……そうでもないのか?

「やっぱ、言ってくる」

「だから、いいじゃねぇか」

通が私を止める。

「お前、1台は送信エラーばっかで、1台は隣の文字に反応するって全滅じゃねぇか!不良品だろ!」

「落ち着け!面白いじゃねぇか」

「面白くねぇよ!」

「うん……面白くはない……が、面白いといえば面白い」

同僚?お前までナニ言ってんだ?

「俺はな、さっきから機械に、歌うな!って拒否されてる気分なんだよ!」

「それはない!俺は聞きたいぜお前の歌を」

「だったら機械交換してもらおうよ、でなければ部屋変えようよ」

「いやいや、昔から桜雪の周りでは変なこと起こるじゃん慣れろよ」

(なんで俺が慣れないのに、お前らが慣れんだよ!)

「そうだ!お前のせいなんだよ!」

「なんだ、俺のせいって!機械ボロイだけじゃねぇか!交換!」

「怒るなよ~、ほらっ歌えよ!」

マイクを差し出す通。

「だから、歌えないの!」


それから1時間、試行錯誤の末、機械のコツというか端末のクセを掴むことに成功。


「ほら、大丈夫じゃん」

通がそれ見ろ的な顔で言う。

「おかしいだろ、客が悪戦苦闘しながらコツを掴むカラオケってさ、歌う前に自己学習が必須って、ブラック企業の新入社員か!」

「ホント短気だよ」

「怒るだろ!ドリンク間違えられるし、端末2台ともポンコツだし、なんだこのマイク、使い込まれ過ぎて、歌ってるとガクガク雑音はいるんだよ!カタカタしてっから!ここんとこが!」

「まぁ落ち着けよ」

通がお茶を差し出す。

冷めた、梅こぶ茶。

「いらねぇよ!もう絶対ただのお湯じゃん、冷めてっから、お湯でもないじゃん!酸っぱ臭い白湯さゆじゃん!」

(ここの店嫌い……お前も嫌い)

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