第10話 通 カップラーメンを否定する

「カップラーメン美味いよね、下手なラーメン屋より美味い」

会社で先輩とそんな話をしていたとき、つうが割って入ってきた。


「インスタント食品なんて身体に悪い!」

(始まったよ……)

「生めんタイプ食ったことある?美味いよ」

先輩がつうに薦めてみる。

「いや、俺は、そういうものは口にしないんです、舌がダメになるんです、そうすると、今度は、身体がダメになるんです、そんなん毎日食ってると

「あっ」

「お前、ちょっと来い!」

「なんですか?ちょっと……」

つうは先輩に連れて行かれた、たぶん倉庫で説教である。

言葉のチョイスが悪かった、つうは先輩が仕事が出来ないと言いたかったわけではない。

身体を壊すと努められないと言いたかったのだと思う。

先輩にしてみれば、同期と比べ微妙な頃だったことも災いした。

なにより、遅刻・欠勤・早退の3冠王であるつうにだけは言われたくなかったのであろう。

断わっておくが、先輩は決して暴力的ではない、仕事も出来る、ただ入社当初に長期入院してしまい、1年ほど休職したのだ。

真面目で面倒見のいい先輩である。

それゆえに、つうのような後輩は嫌いなのである。


とりあえず10分ほどで解放されてきたが、

「俺がナニしたんだよ……だからカップめん食ってるヤツは……」

ぶつぶつ言いながら帰ってきた。

「あ~面白くねぇ!メシにしよ、今日もコレでいいか」

ロッカーから取り出したのは『大盛りイカ焼きそば』カップ焼きそば。

だから、人をイラつかせるんだよな……コイツ。

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