第6話 森の中【Rin side】
ふああああああああああああああああああああああああああああああー。
疲れた~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
まさか二人で狩りに行くとは思いませんでしたよ!
普通、弓の人とか、盾の人とか、ぜいたくを言えば魔法使いとか、何人かで協力し合って狩りをするんじゃないの?
私がこれまでに連れていかれた狩りは、最低でも4人はいたよ?
おかげで、私は皆さんの陰に隠れていれば危険な目に合わずに済んだ。
汚れるけど、危なくない魔石取りの簡単なお仕事を任せてもらってたのよ。
私は、そういう目立たなくて地味だけど安全な仕事が好きなの。
まあ、そういうお仕事も、狩が進むにつれて荷物が重くなり、帰りはほんと大変なんだけどね。
誰も手伝ってくれないし。
でも、怖いのよりはまし。
まさか、戦う人がご主人様一人で、ご主人様が戦っている間、私がほかの魔物の中に放っておかれるなどとは想像もしていませんでした!
いやあもう大変ビビりましたとも! 大きな背負子の心強かったこと! あんな小さな丸い盾では全然体が隠せないし、しゃがめば体が全部隠れる背負子だけが頼りでした!
しかし、結局、ご主人様があっという間に魔物を倒してしまったので、実際には一度も襲われずに済んだんだよね。
いやあ、すごかったね。
目にもとまらぬってやつ?
人は見かけによらないね。
冴えないご主人様だと思ってたけど、案外、やるときはやるじゃん。
まあ、そうでなければ一人で狩りをしようなんて思わないだろうけどね。
あー、でも次からダンジョンに潜るって言ってたけど、こんな調子じゃいくつ命が当ても足りないよ!
せめて足がもう少し動いてくれたら、逃げたり隠れたりできるだろうに。
今のままじゃ、背負子が荷物でいっぱいになったら、普通に歩くのも難しいかもしれない。
背負子を置いて逃げたら怒られるんだろうな。
普段は結構優しいご主人様だけど、狩には真剣な様子だし、命がけで稼いだ魔石や素材を捨てたら、普通怒るよな。
稼ぐことにはやたらと熱心みたいだし。
役に立たない奴隷と思われたら、また奴隷商館に売られるかな?
でも、この前の奴隷商人の話だと、返品お断りってことだったし、当然、買取も無理だろうな。
ああ! そしたら私、完全に不用品じゃん! 生ごみと一緒じゃん! 下手したら大型ごみじゃん!
そもそも、あの奴隷商館に戻っても、無駄飯食いとして処分されるのは目に見えてるし!
いやだ! せっかくいい待遇のご主人様に買ってもらえたんだし、何とか捨てられないように頑張らねば!
得意の色仕掛けが、なぜかこのご主人様には通じないし。
いや、正直、変なことされなくてホッとしてるんで、それはそれでいいんだけどね、単にプライドの問題ね。
食費にも装備にも金使わせてるし、これで稼ぎに貢献しなかったら罰が当たるよね………。
しかし、そうは言っても、命あっての物種だしなあ。
もうこの足はよくならないのかなあ………。
それにしてもうちのご主人様、狩が終わってやっと街に帰ってきたと思ったら、私一人を家に帰らせて自分は酒場に行ったど、なかなか帰ってこないし、いったい何をしていることやら。
どうせ、若い男の冒険者がいくとこなんて決まってますけどね!
あーやだやだ!
どうせ、いかがわしい臭いをぷんぷんさせて帰ってくるんでしょうよ!
こんなにカワイイ女奴隷を買っておきながら、一人で帰らせて自分は娼婦を買いに行くとは!
『俺はお金を稼ぐ、お金を稼ぐ』って何度も言ってるくせに、娼婦に使うお金は別腹かよ!
まあ、アタシは絶対に慰み者にはならないけどね!
性奴隷は法律で禁止されてるしね!
女奴隷に手を出したことがばれると、娼館がお上にこっそり訴えるって言うしね!
商売敵は目の敵ってね。
まあ、そんなことがあったかどうか娼館の人は知りようがないだろうから、ただの噂だろうけど。
世間のご主人様がみんな法律を守ってたら、私がこんな体になることもなかった訳だけどね。
前のご主人様みたいに、私がいいなりにならなかったからと言って折檻するような人でなしばかりじゃない。
今度のご主人様は、今のところちゃんとご飯を食べさせてくれてるし、乱暴なことやいやらしいこともしないし、独身だし、年もまあ、年寄ってほどじゃないし、多少人使いが荒いだけでそんなに悪いご主人様じゃなさそうだ。
こっちがご主人様を選べるわけじゃないんだから、少しでもましなご主人様なら、我慢してついていかねば!
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