第8話 ダンジョン突入!【Rin side】

 森での狩の翌日は朝から、ご主人様に連れられてダンジョンに突入しました。

 1階層は結構人出があり、ご主人様はお知り合いにご挨拶してらっしゃいます。

 お知り合いの人は、ご主人様に快く挨拶を返しておられ、不愛想だと思っていたご主人様の意外な一面を見る思いです。

 そして、みなさん、ご主人さまの後ろに控える私のことをまじまじと見られてました。

 やっぱり私、罪作りな女なのかな?

 ご主人様は皆さんに


「ポーター代わりの奴隷を買ったんだ。」


と説明されていましたが、みなさんは


「ふーん」


などと返事するだけで、なぜかそれ以上詳ししい質問はされませんでした。

 私が女奴隷なので、私とご主人様の仲を疑ってらっしゃるのでしょうか、ムフフフフ。


 1階層は人が多いせいで魔物にはなかなか行き当たらず、ご主人様はさっさと2階層に向かわれました。

 他のパーティーは初めて来られた方もいるようで、地図とにらめっこしながら同じ階をうろうろされているところもありました。

 しかし、ご主人様は何度もこのダンジョンを潜っているそうで、迷わず2階層への通路を目指されました。

 でも、やはり私の足が遅いので、ご主人様としてはかなりペースを落としてくださっているご様子。

 その後、2階層、3階層と降りていくと、次第に人が減っていき、段々と魔物に遭遇する回数が増えていきました。

 しかし、3階層あたりまでは出てくる魔物がほとんど変わらず、弱い魔物が一度に1体か2体程度でしたので、あっという間にご主人様が倒されて何の危険も感じません。

 少なくなったとはいえ、まだ周りにほかのパーティーがちらほらいますし、ご主人様の知り合いも多いようなので、いざとなったら助けてもらえそうですから安心して付いて行けます。

 魔物が増えだすと、ご主人様も周囲を警戒しながら進まれますので、ご主人様の歩くペースも徐々に落ち、私も焦らなくてもついていけるようになりました。

 これなら何とかやっていけるかな……………………


 ◇◆


 などと甘いことを考えていた時期が私にもありました。

 ご主人様はさっさと3階層も通過し、4階層、5階層へと進んでいかれます。

 周りの人も段々少なくなり、魔物の気配が濃くなっていきました。

 そして、4階層からは出てくる魔物が明らかに強くなり、一度に出てくる数も徐々に増え始めました。

 魔物が強くなったと言っても、まだまだご主人様の方が相手を圧倒してらっしゃいます。

しかし、魔物が複数出てくると、私の方に向かって来ようとする魔物がいたり、戦闘の気配を感じて離れたところにいた魔物が私の背後から近付いてきたりして、私も戦闘に巻き込まれそうになります。

 ご主人様は、あらかじめ私に、「戦闘が始まったら、周りにほかの魔物がいないか注意して、できるだけ離れて岩陰などに隠れておけ。」とおっしゃっていたのですが、やっぱり私の足が遅く、魔物に追いつかれて襲われそうになったことが何度かありました。

 幸い、背負子を盾にして、魔物が背負子にかみついたり、背負子を引っかいたりしているうちに、ご主人様が助けに来てくださったので怪我をせずに済みました。

 結局、5階層まで下りたところで引き返し、その後は魔物に囲まれる心配のない3階層に戻って狩りを続け、今日の狩りが終わりました。

 ご主人様によると、稼ぎとしては普通だそうです。

 ただ、シーズンが始まるともっと魔物が増えるそうですし、シーズン中はもっと稼がなければならないので、今後はもっと深い階層まで行くつもりだそうです。

 ああ、このままだと私は完全に足手まといになってしまいます。

 申し訳ないなあ………………………………


 ◇◆◇


 などとしおらしいことを考えていた時期がありました。

 2日目になるとご主人様は6階層からさらに7階層にまで突入されました。

 魔物が増えすぎて手に負えなくなると、私の背負子をつかんで無理やり走らせ、二人で魔物から逃げ出す場面もありました。

 ひえ~、ひえ~と叫びながらなんとかご主人様についていこうとしますが、私の足では到底ついていけず、結局ご主人様が私ごと担ぐようにして走って逃げました。

 グハー、死ぬかと思った~。

 ご主人様の支持はどんどん厳しくなり、「早くそっちに隠れろ!」「ぐずぐずするな!」「傷薬をよこせ!」「替えの短剣をよこせ!」「俺がこっちの魔物を始末している間に、さっき倒したそっちの魔物をさばいてしまえ!」などと無茶なことばかりおっしゃいます。

 私は、足をがくがくさせ、手をぶるぶる震わせながら何とかご主人様の命令どおり動こうとしました。

 でも、すぐそばで魔物が叫んだり跳ねまわったりしますし、ご主人様も私のすぐそばで槍や剣を振り回してらっしゃるので、私は怖くて気が気ではありませんでした。

 今のところ私もご主人様も傷薬で治せる程度の傷しか負っていませんが、この先も大丈夫なのでしょうか。

 魔物も怖いのですが、階層が深くなるにつれてご主人様の目つきが変わってきて怖いです。

 目の色が変わったご主人様は、私を置いてどんどん魔物群れに突っ込んで行きそうになります。

 ご主人様は魔物が怖くないのでしょうか?

 この人もしかして戦闘狂?

 それに、私のこといっぱい怒鳴ってこられるし、地上にいるときと人が変わったようです。

 私がか弱くけなげで可愛い乙女奴隷だということを忘れてしまわれたかのように見えます。

 ダンジョンの中で、私を置いて魔物を追いかけて行ったりしないよね?

 なんか雲行きが怪しくなってきました。

 もっと、体が弱いアピールをしたほうがいいのかな?

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