第9話 置いてく?
リンを連れてダンジョンから地上に戻ると、もうすでに夕方だった。
他のパーティーもぼちぼち引き上げてきており、みんなでぞろぞろ街に向かうので、森の中の道も魔物が出ず安全だ。
リンはすっかりへばてしまい、地上に出たところで座り込んでしまった。
仕方なく町まで俺が背負子を背負ってやることにした。
まあ、リンまで背負うわけにはいかないので、
「さっさと歩かないと置いてくぞ。」
と脅して先に歩き始めたら、リンは
「ハア、ハア……………ごぼっ、ご主人様~…………、ぐっ、ぐはあ………ひー。」
などと、しゃべってるんだか、あえいでるんだか分からない声をあげながら、杖に縋りついて立ち上がり、よたよたと付いてきた。
すると、途中でグレコのパーティーに追いつかれた。
「よお、ジュリアン、今帰りか。」
とグレコが声をかけてきて、遅れがちについてくるリンの方を見ながら
「大変そうだな。うまくいってるのか。」
と尋ねてきた。
俺は、グレコに
「まあ、何とかな。地上に出てからは俺が荷物を運んでるが、ダンジョン内ではちゃんとリンに運ばせてたから、身軽で魔物狩りがしやすかったよ。
まだ10階層よりも手前までしか行ってないから、戦闘は俺一人でも楽勝だし。
まあ、荷物を持ったリンのことも守りながら戦うっていうのがちょっと厄介だがな。」
と返事をした。
グレコは、
「お前はもともと生粋の前衛職だし、本来ならお前が後衛職のサポートを受ける側なんだがな。
今は奴隷とはいえ2人でパーティー組んでやってるんだから、ちゃんとリンちゃんのことも見てやるんだぞ。」
「なんだ、そのリンちゃんて呼び方はやめてくれ。そんなかわいいもんじゃないだろ。」
「そっちこそなんだ、ちゃん付けで呼ぶと情が移るのが嫌なのか。」
「奴隷は奴隷だろ。道具みたなもんだ。」
「軍人や商人は奴隷を物扱いするが、個人で所有して生活を共にする奴隷はなかなかそう割り切れるもんじゃないだろ?
まして、背中を預けあうパーティーだ、信用できない奴とじゃ潜れないだろ。
それに、狩で採れた魔石や素材を全部預けるんだから、リンちゃんのこと信用してるんだろ?」
「信用というか……戦闘の役には全く立たないし、逃げ足は遅いし、何を考えてるのかよくわからない奴だけど、まあ、俺が言ったことは一応やろうとはしてるようだし、ぶつぶつ言いながらもついてきてるしな。
荷物持ちがいると、俺一人で潜るより楽なのは確かだし、こいつを買うのにかかった費用分くらいはしっかり働いてもらおうと思ってるだけさ。」
「ふん、前はパーティー仲間にでももっと辛辣だったくせに、リンちゃんにはお優しいことで、へっ!」
などとからかいながら、グレコは振り返ってリンの歩く様子をじっと見ていた。
俺も振り返って、遅れているリンの歩みを見た。
疲れたせいか、いつもより足を引きずっており、俺たちよりだいぶ遅れている。
俺は仕方なく立ち止まってやることにし、グレコに
「先に行っていいぞ。お前のお仲間まで待たせるわけにはいかないだろ。」
「ああ、じゃあ先に行くよ。
なあ、ジュリアン、無理はするなよ。
手伝いが必要だったら、いつでも言ってくれよ。」
そう言うと、グレコは俺に向かって手を振り、先に街の方へ歩いて行った。
俺は、振り返ってリンの方を見た。
リンは
「ゴッ、ご主人様~、ウハッ、グッ…………へへ…………。」
などと言いながら、ゴレコのまねをしてるのか俺の方に向かって手を振りながら、よたよたと一生懸命歩いてついて来るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます