第24話 魔装剣【Rin side】

「たしゅげでー! だれぐぁ、たしゅげでぐだざーい! ごじゅじんだまがー! だれがー、ごじゅじんだまをー!」


 私が助けを求めて穴の上に向かい声を張り上げていると、突然魔物の悲鳴が響き渡りました。


 ギュヲオオオオオオオオオオ!!!!!!


 なに?!何が起こってるの?!!!!


 私は穴の入り口をふさいでいた背負子を少しずらして隙間を作り、魔物やご主人様の方を覗き見ました。


 すると!!!!!!


 なぜかのけぞった魔物の口にご主人様がぶら下がって振り回されているのが見えました!

 大変!ご主人様が魔物に食べられてしまう!!

 魔物はものすごく大きな声で悲鳴を上げており、その声が狭い洞窟に響き渡り、洞窟の壁がミシミシ言っています。

 そして、ご主人様も何か叫びながら、暴れまわる魔物の口の下のところにつかまって、ぶらぶら振り回されています。

 これはきっとご主人様の大ピンチです!

 私は、ご主人様を助けに行きたかったのですが、魔物があまりに激しく暴れまわっているためとても近づけそうになく、はらはらしながら見守ることしかできませんでした。


 しかし、私の心配をよそに魔物は徐々に力をなくしていき、叫び声をあげなくなったと思ったら横向きに倒れました。

 ご主人様はそれに合わせて魔物から飛び降りましたが、床がまだ燃えていたため、慌てて私の方へ飛びのいてきました。

 ご主人様は穴の入り口の横の壁に背を持たれさせ、荒い息をしながら魔物のほうを見ておられます。

 こんな時でも、ちゃんと私を守りに来てくださったんですね、ご主人様!

 私が感激のあまり背負子をどかし、穴から出ようと首を出したところ、なぜかご主人様はビクッ!として飛びのこうとされました。


 あれ?どうしたんですかご主人様?そんな魔物を見るような目で私を見ないでください。あなたの奴隷のリンですよ?


 その後、なぜかご主人様は、しばらく笑い続けてらっしゃいました。

 私は、訳が分かりませんでしたが、魔物がやっつけられ、ご主人様も私も無事だったことにほっとし、ご主人様の笑っている声を聞いてさらにほっこりしました。

 とんでもない大物の魔物の出現に一時はどうなることかと思いましたが、ご主人様が倒してくださり、私もご主人様も何とか無事でよかったです。

 よかったですね、ご主人様!


 その後、穴の上の方からグレコさんの声が聞こえ、ご主人様が返事をすると、グレコさんがロープを使ってこちらまで降りてこられました。

 あとからゼットさんも降りてこられ、グレコさんとゼットさんは倒れた大型の魔物を見てビックリされていました。

 ご主人様たちが三人がかりで魔物から魔石を取り出しましたが、何とその魔石は人の頭くらいの大きさで、深い赤色の巨大な魔石でした。

 ゼットさんが言われるには、ドラゴンフライのような火炎系の魔物の魔石としては一級品で、大きさはダンジョンボスの魔石に匹敵するそうです。

 そして、魔石の透明度や色の深みが通常の魔石よりもはるかによく、これほどの魔石はゼットさんでも見たことがないそうです。

 もちろん、その魔石は魔物を一人で倒したご主人様のものです。


 魔石を取り出すと、残りの魔物の死体はそのままにして、私たちはいったんグレコさんのロープを使って穴から抜け出しました。

 やはり巨大な魔物はダンジョンボスだったようで、そいつが倒れるとともに魔物が出てこなくなり、間もなく残っていたまま物も討伐されて、とうとう今年の狩りのシーズンも終わったようです。

 冒険者の皆さんの表情も緩み、ホッとした空気が流れています。

 ご主人様が倒した巨大な魔物の魔石は私の背中の背負子の中です。

ご主人様は、最初、私の背負子が重そうなのを見て自分で運ぶとおっしゃいましたが、私はご主人様に頼んで何とか私の背負子にその巨大な魔石を詰め込み、地上まで運ばせてもらいました。

なんてったって、私はご主人様のポーターですからね! 魔石を運ぶのは私の仕事です!



 

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