第4話 帰宅【Rin side】
ご主人様からいきなり風呂に入れと言われたときは、『騙された! やっぱり変態だ!』と思ったけど、一人で入らされておまけにお湯まで沸かしてもらえた。
これまではよほど寒い時期以外は水浴びが普通だっただけに、お湯を沸かし始めた時はてっきり一緒に入るのかと思ってビビったけど、私一人でのんびり入らせてもらった。
うわ~~~~~~~~~~~~~~~お湯につかっていると気持ちよくてホントに心地よい! リンちゃん幸せ!
足の傷の痛みもましになるし、腹の調子も良くなったみたい。
お湯がどんどん汚れて垢やらなんやらが浮いてくるけど、まあ、見なかったことにしよう。
風呂から上がったら、ナント! ご主人様が飯の用意までしてくださっていたではありませんか! オホホホホホホ! これではどちらが奴隷か分かりませんわね。
いやあ、久しぶりにまともな飯にありつけて幸せいっぱい!
スープには肉まで入ってたし!
干し肉だけど!
量もちょっぴりだけど!
でも、ぜいたくは言いません!
腹いっぱい食べさせてもらえるだけでもありがたいですとも!
いやあ、いいご主人様みたいでよかった!
これからも毎日お肉をよろしくお願いします!
あ、飯食ったら眠くなってきた。
寝てもいいかな、そのほうが早く体が治るしね!
病気の奴隷を働かせちゃいけないって国の法律で決まってるしね!
そんな法律、真面目に守ってるご主人様がいるなんて話は聞いたことないけどね!
まあ、眠いのは我慢して、後片付けくらい私がやりましょうか。
役に立つ良い奴隷だというところを見せなくちゃ。
そういうところに気が付くかどうかで、よい奴隷と思ってもらえるかどうかが変わってくるんだしね。
悪い奴隷と思われるとスープに浮かぶ肉の数が減ったりね!
下手すりゃ、お肉が浮かんでなかったりね!
ああ、それにしても眠いなあ……
ゴン!!
痛っ!!
あれ?なんか記憶が飛んでる。どうやら、いつの間にか居眠りをしていて、おでこをテーブルにぶつけて目が覚めたらしい。
んー、まだ病気が治りきってないせいだな、きっと。
意識がなくなる前、なんかご主人様が今後の予定とか、私の装備がどうしたとか、役割分担がどうのとか言ってたような気がするけど、病気のせいで、よく思い出せません。
ご主人様が怒らなかったのはよかったけど、なんか、さっきから私のことをアブラムシを見るような目で見ているような気がするのは気のせいだろうか?
被害妄想ってやつか?
こういうとき、よい女は開き直らず、魅惑的でおしとやかな微笑みで殿方の心をかき乱し、その場をやり過ごすという。
それでは、リンちゃんスマイルのお出ましとまいりますか。
「オホオホホホホホホホホホホホホホホホホホホ……ゲホゲホゲホゲホッ」
チッ! しくじったか!
でも、なぜかご主人様がそっとこちらに背を向けたので、結果的には何とかその場をごまかせました。
さすがリンちゃんスマイル。
◇◆◇
午後は、ご主人様が市場に連れて行って下さり、服や下着を買ってくださった。
まあ、古着だし、実用一辺倒の丈夫で地味な奴だけどね。
ダンジョンに行くって言ってたから、きれいなおべべを買ってくれるはずがないのは分かってたけどね。
セクシーな下着を買わなかったのは、あえてよかったとしよう。
また、変態さんの疑いが少し減ったよ、よかったね、ご主人様!
不愛想なご主人様だけど、アタシが焼いた串肉の屋台の前で立ち止まって動けなくなっていたら、2本買って1本を渡してくれた。
まあ!なんてお優しいご主人様!ついていきます、どこまでも!
デレたか?この私のかわいらしさにデレたのか?チョロイご主人様はよいご主人様!
でも、その後、道具屋でやたらとでかくて丈夫そうな背負子を背負わされ、サイズが合うかしっかりと確かめてから買うのを見て不安になった。
あれを私が背負うことになるのは間違いなさそうだけど、中身はどれくらいの重さのものを入れるおつもりでしょうか?
私、病み上がりですよ?
足の大怪我はまだ治ってないし、藪医者は治らないって言ってやがったし、背負子なしでもゆっくりしか歩けてないのはさっきから一緒に歩いてるんだからお分かりのはずですよね? ね?
しょせん奴隷だから、つらい重労働をやらされることは想定内ですけど、魔物がうろつく薄暗いダンジョンであんなでかい背負子に重い荷物入れて背負ってたら、いざというとき逃げられやしない!
それでなくても、足にけがをしているから逃げ足が遅いのに。
まあ、前に行ったダンジョンの浅い階は弱い魔物しか出なかったし、しかも、なかなか魔物が見つからず探してる時間がやたら長かったので、あれと同じならめったなことはないと思うけど。
でも、それならあんなにでかい背負子はいらないはずよね?
ドウイウコトデスカ?
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