第8話
はい、ここで問題です。俺は今どこにいるでしょーか?
わかるかな? わかるかな? ヒントは真っ暗な場所。真っ暗で、ジメジメしてとても辛い場所だよ。きっと入れられたら親御さんが悲しむような、そんな感じの……。
「おい、ブツブツうるさいぞ! 犯罪者なら神妙にしろ!」
……はい、正解は牢屋でした~。あー鬱だ死のう。
エルフを送り届けに来ただけなのにこの仕打ち。感謝こそすれ捕まるような事ではないと胸を張って言えるのに。そりゃまあ状況証拠的には完全アウトだけどさ。
だが考えても見てほしい。人間と争ってるエルフの元にエルフを虐待したと思われる人間がいるというこの状況を。
はい。詰みですね。九割方死刑になること請け合いですよ。ちなみにこれ詰みと罪を掛けてるんだ。
……え、上手くない? すいません。
とりあえずこの状況を打開する為に先程怒鳴ってきた看守へ声を掛ける。
「なあ、頼むからサーシャを呼んできてくれよ~」
「ふん、犯罪者ごときをあの御方に会わせるなど到底出来ん」
「だから冤罪なんだって! サーシャなら分かってくれる筈なんだよ」
「呼び捨てにするな! サーシャ神と呼べ!」
それむしろ呼びづらくねぇ?
とりあえずこの看守がサーシャの熱狂的なファンらしいことは分かった。まあ魔王も倒すような伝説的な人物が目の前にいるってのは結構な事だろう。
ま、それならそこに付け入る事も出来そうだ。心の中でニヤリと笑う。
「なあなあ、物は相談なんだけどよ……」
「賄賂など受けとらんぞ!」
「まあ落ち着けって。俺はただ御届け物をしてほしいだけなんだよ」
そう言ってポケットからあるものを取りだし、看守に見せ付ける。
「サーシャのものだ。返しといてくれないか?」
「そっ、それは……まさか……」
右手のブツを見て明らかに動揺する看守。
「……ほ、本物、なのか……?」
「それはあいつに見せれば一発でわかるだろ? なあ、お願いを聞き届けてくれんか?」
「いや、しかし……犯罪者に……」
「もし俺の言うことが本当だったらお前の立場も危ういぜ? 今後一切サーシャと口が聞けなくなるかも……」
「……」
口を閉ざして青い顔をする看守。クク、効いてる効いてる。
「呼ぶだけだから、な? こいつも先払いしとくからさ」
「……わかっ、た」
よし、頷いた! やっぱり効果覿面なんだなぁ……。
サーシャの下着って。
やっぱり下着は偉大なんだな、と改めて思う。
「そんじゃ、宜しく頼んだぜ! 俺はここで待ってるから―」
「―あら、その必要は無いわよ?」
牢屋の出口から聞こえてくる声にピシリ、と体が固まる。
「それの受取人が直々にやって来たわよ? ええ、わざわざ直々に」
ギギギ、と油を差していない機械のような動きで声の主へと振り向く。逆光で顔は見えないが、俺は確信していた。
「ところで、それをどこで手にいれたか……詳しいことを聞きたいんだけど?」
こいつは
========================
「で、反省した?」
「ふぁい、もうふぃふぁふぇありふあまふぇん……」
あの後滅茶苦茶ボコボコにされた。
いやホント、まともに話せないくらいにはボコボコにされた。勇者特有の回復力で何とかなるけど、暴力系ヒロインは昨今では嫌われちゃうぞ?
「まったく、魔王討伐の直前にも下着を盗むなんて……お陰でお気に入りの下着が四百年も付けられなかったじゃない」
下着を四百年も付けられない……ノーパンみたいでとても興奮します。
「アキラ?」
「すいませんごめんなさい許してください何でもしますから」
ん? 今なんでもするって(ry
というかさらっと思考読むのやめない? 困るんだけど。主に視姦してる時とか。
「あんた考えが顔に出やすいんだから……考えてることバレバレよ」
え? と思いつつ顔に触れる。
うん、たんこぶが痛いや。
「ま、とりあえずそこでしばらく反省してなさい。二日ぐらいしたら迎えにくるわ」
「そ、そんな! 何とかならんのか?」
「ダメよ。冤罪云々の前に私のパンツ捕ったじゃない」
「いや、パンツだけじゃなくブラも」
「せいやぁ!」
「ぐぺっ」
グシャッ、と頭部からしてはいけない音が響く。傷だらけの状態では耐えられるはずもなく、俺の意識は闇へと落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます