孤島

あの日、助けてくれたお兄さん、大好き。今はどこにいるのですか。 孤児院で育ったリゼットは、戦場で自分を救ってくれた兵士ジョミナイを兄のように慕い、手紙を書き続けている。朗読士に…

ショートショート4作

治承三年二月四日（一一八四年二月四日）、鵯越《ひよどりごえ》。源義経は麾下七十騎とともに、そこから間道を抜けて、一路、福原をめざしていた。　史上、一ノ谷の戦いといわれるこの戦いで…

「なんとなく過ぎていく日常、その陰と陽の狭間に潜む、不思議な断片たち」 何気ない日常にふと現れる違和感。 それは偶然か、それとも見落としていた現実か。 「日陰と断章」は、日常…

かつて「ひぐらしのなく頃に」という同人ゲームがありました。最初は暇潰しのつもりだったのに――はまってしまった理由は何なのか、当時を振り返ってみました。

絶対に略称を許さない彼女とのデート。 事あるごとに、彼氏の発言に対して正式名称で言い直してくるのだが…。 果たして2人のデートは、一体どうなってしまうのだろうか？ 全3話で…

今年の夏、私がはまっているのは、温室の花々。 彼らと、少しでも、お近づきになりたい。

ローマ帝国の時代。孤児は奴隷として売られ、少年剣闘士になった。やがて、自由を得るために、帝国の皇太子と試合をすることになる。

鎌倉時代末期、元享二年（１３２２年）初夏。得宗（執権北条家）被官（ひかん）の兵衛（ひょうえ）は、辰砂（しんしゃ。薬、赤の顔料）を売るために、六波羅探題の命を借りて渡辺党を討つ。代…

だれか、助けてください。

灰色の霧に覆われた不毛の地。そこに横たわる巨大な眼球が映し出すのは、失われた人々の悲しみ。その涙を吸った一匹の蚊が、絶望の羽音を奏で、やがて大蜘蛛を目覚めさせる。嘆き、孤独、絶望…

トマ・クチュールはマネを六年間も指導した先生で、十九世紀最大の画家と評されることがある。 七月の初めに美術に行った時、彼の絵が新しく展示されているのに気づいた。それは、晩年に描か…

柴田恭太郎さん主催の自主企画、三題噺「息」「予感」「光」の参加作品。 風景画を最初に描いたと言われるパティニールについてです。

綾白さんの自主企画「1分で読める物語の本棚」参加作品。 伝説のインディアン・クレージーホースと、未来の妻・ブラックショールとの出会いを、1000字で書いてみました。

札幌に帰って、石狩に行った時の思い出。

カクヨム短歌賞【ナッガタリ'25】（一首部門）

深雪了さんの自主企画「ショートショート、モキュメンタリーが読みたい」の参加作品です。モキュメンタリ―とは、「もっともらしく見えるけれど実は嘘」のことのようです。 カラヴァッジョの…

中央アジアの遊牧民の娘トミュリスは、やがてマッサゲタイ族の女王となる。ある日、ペルシアの王キュロスから婚姻と見せかけた屈辱的な申し出を受け、トミュリスはこれを拒絶。対話が決裂する…

隋末唐初――暴君・隋の煬帝はたび重なる遠征、贅沢により、国政を乱れさせてしまう。結果、国内には戦乱が相次ぎ、唐公・李淵の子、李世民は隋に見切りをつける。しかし最後まで隋のために戦…

「方丈記」で知られる鴨長明は、歌合せの場で「瀬見の小川」という言葉を用いる。うつくしさのあまり、月が瀬を見に来る川、という意で、鴨川のことを言う。ところがそれは、鴨長明の家――下…

王都に雨が降る夜、ヴィクトール王は塔の上から町を見渡し、広場の灯の下に佇む一人の少年を見つける。なぜか彼に心惹かれた王は、少年を城へと招き入れ　雇うことにした。そして、王はマモと…

西暦751年、黒衣大食（アッバース朝）のホラーサーン総督、アブー・ムスリムは唐の安西節度使・高仙芝が西域──石国を荒らし回っていることを聞き、麾下のズィヤード・イブン・サーリフに…

短歌10首連作

いとうみことさん自主企画の参加俳句です。 「鍋」四句

廃墟で書いては燃やしているある女性のもとに、みすぼらしい旅人が現れた。 かつての王都の面影が朽ちた廃墟の酒場で、元書記官のフロリアは日々、過去の記憶を紙に記し、火にくべていた。…

その宇宙船は、船内の循環機構の中枢を担う、ある植物《プラント》がある。その植物は、死体を含めて人間の出すものを養分として発芽し育ち、実は蛋白源となり、葉や茎は食用となり、繊維を供…

「西荻窪三ツ星洋酒屋」というとドラマを見たことから、AIに助けられなが、思い出を辿ってみた

清須会議により、織田信長亡きあとの体制がととのえられた。信長の後を継ぐのは、孫の三法師となり、それを事実上後見するのは――羽柴秀吉である。秀吉は、本能寺の変で明智光秀に討たれた信…

那須与一は屋島の戦いにて、扇の的を当てた。当てたが、彼は危惧する――「このようなことをやっている場合なのか」、と。摂津（大阪）・渡辺津から、わずか150騎で出撃して以来、昼夜兼行…

紫衣事件により、出羽上山へ流罪となった沢庵。その沢庵を護送するのは、親友・柳生宗矩の息子である十兵衛だった。 十兵衛と沢庵は互いの武芸の心得のあることを認め合い、囚人とその護送で…

妹がこんな夢を見たと言って、しつこい。数えて九回目だが、実はどれも同じ内容だ。日と月を手のひらでつかむ。姉のわたしに、何でこんな夢を見るのかと聞いて来る。そんなこと知るかと言いた…

慶長5年10月1日、石田三成、斬首。 その首は三条河原に晒されていた……まるで「捨てられた」かのように。 やがて日が経ち、骨が見えるまでになったその首を弔わんと――あらわれた僧侶…

「ひぐらしのなく頃に」に出てくるヒロイン――園崎魅音を推すようになった経緯について。 また、その過程で知った、二次創作という「やり方」で推す意味。

私の住んでいる街には地域猫の「たまり場」があって――娘と散歩しに行った時のお話。

フィレンツェに戻った26歳のミケランジェロは、ある少年をモデルにして、ダビデ像を彫ろうとした。 その少年の名はマッテオ。 マッテオは16年前のクリスマスの朝、フィレンツェの捨て子…

長編 恋愛ファンタジー: ここは仙師達が住む世界。 仙師の冬氷は17歳、次代を期待されているエース的存在。 一方14歳の竹香は仙人と人間のハーフで、仙術が使えず、空も飛べない。…

1799年、マリー・ジョゼフ・ローズ・タシェ・ド・ボアルネは、30万フラン以上の大金をはたいてパリ郊外マルメゾン城（シャトー・ド・マルメゾン）を手に入れ、愛人のイッポリット・シャ…

柳生宗矩（やぎゅうむねのり）は、幕府に逆らった禅僧・沢庵宗彭（たくあんそうほう）を許してもらうよう、徳川家光に歎願状（たんがんじょう）を出していた。 正月、いっこうに返事を寄越さ…

「私」は、天才と謳われたジューガー・リャンが何をしたかったのか知りたくて、ある秋の日の昼下がりに、かつての彼の主を訪ねる。その面会の中で、「私」は、今は亡きジューガー・リャンがや…

小さい頃、「ドラえもん」の映画を観た街の映画館が、今でもつづいていることに感謝して。

科挙といってもさまざまな段階があり、たとえば明代には郷試というものがあった。 王というその若者は郷試を受けたその日の夜、不思議な夢を見た。 ふたりの巨人に東西に立って、王に語りか…

第一次世界大戦下のパリ。松方幸次郎は、西洋美術を日本の美術を志す者たちに見せたいという夢をかなえるため、パリ郊外ジヴェルニーのクロード・モネのアトリエを訪ねた。幸次郎は、モネから…

このチェーホフの短編、どこがそんなにすばらしいのでしょうか。 でも、これは書籍本の話。 カクヨムコンに出したら、パスするのかどうかはわかりません。

もし――カクヨムを始めようという方がいらっしゃったら、ご参考にどうぞ。 カクヨムを始めて一年数か月の作者が、カクヨムと出会い、投稿に至るまで、そして投稿してから経験したこと、感じ…

明治三十二年秋。 正岡子規は喀血と腰痛により、東京根岸・子規庵の病床で過ごす日々を送っていた。そこへ、学生の頃からの親友である夏目漱石が訪れる。漱石は「黄金林檎の落つる頃」とこぼ…

神は天使ミハエルに三つの質問を出した。 結局、真理はそれほど難しいことではないのだ、と思わせてくれるトルストイの民話をもとにした一作。

フランス革命暦第２年霧月（ブリュメール）２日。パリ、ノートルダム寺院あらため「理性の神殿」において、「理性の祭典」という催しがおこなわれた。 主催者のエベールは、「デュシェーヌ親…

東ローマ帝国は「大帝」ユスティニアヌス一世の即位直後、532年に起こったニカの乱により、窮地を迎える。皇后テオドラの叱咤によりユスティニアヌスは将軍べリサリウスに鎮圧を命じ、窮地…