概要
このままでは負ける――そう危惧する与一だった。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!屋島の戦を広げて見る
屋島の戦い、と言ってまず思い浮かぶのは、なんといっても弓で船の上の扇を射た那須与一ではないでしょうか。その戦にも様々なドラマがありました。
本作はそんな那須与一の視点で書かれていますが、あの弓を射るシーンは、ただの余興ではありません。そこに交差する思いや策略、戦況などが緻密に綴られていて、短編という短いお話の中に、屋島の合戦で起こった出来事を凝縮してそこに見ているようでした。
個人的に、大将・義経の天才さに加えて非道な一面がある描写、そしてタイトルにあるような春の海のあたたかさとつめたさといった対比の描写にも、引き込まれました。
歴史が好きな方にはぜひおすすめしたい作品です。 - ★★★ Excellent!!!矢が射抜いたのは、扇か、それとも戦局か
春の海に揺れる、たった一振りの扇。
那須与一が放った矢が、それを正確に射抜いた瞬間、
歴史はひとつの岐路を越えた。
だがそれは、ただの名場面ではない。
源義経が放ったのは、戦略という名の火矢だった。
五艘の小船。百五十騎の寡兵。
それで挑んだのは、数千を擁する平家の水軍。
なぜ、あえて無謀に見える賭けに出たのか。
なぜ、漁師の村に火を放ったのか。
そして、なぜ義経は「遠くではなく、近くを見ろ」と言ったのか。
「拙速は、巧遅に勝る」
その信念が突き刺したのは、屋島の防衛線だけではない。
それは、戦を読むという知のあり方への挑戦だった。
これは、与一の矢が語るもうひとつの屋島。
伝説の裏…続きを読む - ★★★ Excellent!!!天才とは
那須与一の視点で描かれた源平合戦の一幕。
屋島の戦いの、扇を撃ち抜く鮮やかな場面は、目に浮かぶような見事な描写。
しかし、この短編はその背景にこそ注目しています。
具体的な内容は避けますが、大将である源義経、そのある種の芸術家気質、怪物性を感じる作品でした。
別作「笹竜胆(ささりんどう)咲く」では、兄である源頼朝の視野の広さ、深慮遠謀を怪物性と表現できるかもしれませんが、その生い立ちや背景から自然と生まれた使命感が根底にあり、納得も共感もできるのですが、義経のそれはもう突然変異みたいなものではないでしょうか。
その他者が共感、理解できない感性を考えると、その後の悲劇は必然だったよう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!やべー兄弟・弟の戦い(※でも将来もっとやべー兄貴に討たれます)
春、それは希望と絶望の季節。新たな出会いに心躍らせ、お世話になった人と分かれる季節。萌え息吹く草花に心奪われ、杉の花粉に殺意を抱く季節。長い冬の終わりを告げる季節も、まだどこかに冬の厳しさが潜んでいます。
本作は、そんな春の二面性を、日本人なら誰もがその名を知っているあの人物で描いた短編です。
舞台は、源平合戦の終盤・屋島の合戦。「扇の的」のエピソードで有名なあの戦いですが、この合戦に臨んだあの人物――義務教育で習う出来事にネタバレも何もないと思うので書いてしまうと、源義経――の考えが、那須与一の目を通じて描かれます。
戦いの天才としばしば評される義経ですが、従来は「浮世離れしてい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!戦場の現実と英雄の葛藤――名場面の裏側にある、戦士たちの苦悩と決断🌊📖
『春の海のあたたかさとつめたさと』は、四谷軒先生が描く歴史小説で、屋島の戦いを新たな視点で描いた作品です🌸✨。
物語は、源平合戦の名場面として知られる那須与一の扇の的を射る場面を中心に展開されます🪭🛶。
しかし、与一はただ命じられたままに矢を放ったのではなく、「このようなことをやっている場合なのか」と戦況を憂慮していました🤔。
摂津(大阪)からわずか150騎で出撃し、昼夜兼行で讃岐(香川)の屋島まで到達した彼らは、疲労の限界に達していました😫。
それにもかかわらず、源義経は扇の的を射るよう命じ、戦場に悠然とした空気を作り出していたのです――🏹
英雄の葛藤と戦場の現実を、ぜひ体験して…続きを読む