歴史上の人物――誰やねんお前レベルのどマイナーな人物から、知らん奴は義務教育やり直せレベルの有名人物まで――にスポットを当てた、短編ときに長編をものしている、歴史好きは即フォロー推奨の四谷氏。氏の近況ノートにて新作予告がされたので、大掃除もそっちのけでPCの前に貼りついて待機していましたが、投下された作品タイトルは「ジューガー・リャンは何をしたかったのか」。
……ジューガー・リャンって誰やねんお前。昔のプロ野球の助っ人外人か? いやなんか中国系っぽい、となると中国史のマイナーな時代の武将か誰かかな? いやいや四谷氏のこと、近代アメリカかどっかで財を成した華僑とかかもしれん。そう思いつつ読み始めました。
対話形式で語られる謎のリャン氏。リャン氏を知る老人から語られるその人物像は、ああ苦労人だったんだな、にしてもこの老人もたいがいだな、などとうなずきながら読んで……読み進めて……でrftgyふじこlp!!(悶絶)
最後まで読み進めてから、もう一度最初から読み直しました。すると、老人の語るリャン氏の行動のひとつひとつが、パズルのピースを嵌めていくように私の知識と符合していきます。ああ、これぞ歴史物を読む快感、これぞ四谷作品の醍醐味!
ある意味叙述トリックとも言えますが、リャン氏の言動、それを語る老人、その語りを聞く聴き手、彼らの考えと行動もまた深い感慨を覚えます。
2024年の掉尾を飾る短編をお探しなら、是非本作を!
タイトルにある「ジューガー・リャン」。
大抵の方(レビュー筆者も含め)は「誰?」となるでしょうが、何者なのかは実のところ本文を読まずともわかります。
……タグに書いてありますので(検索にかからないような細工はされていますが、すぐ解読できます)
ということで、レビュー筆者は「ジューガー・リャン」が何者かを知ったうえで、初読を読み進めたのですが。
個人的には、タグを見ずに読むべきだったと少し後悔しています。
知らずに読み始めたほうが、「ああ、あの人だったか!」と気付いた瞬間、新鮮な驚きが得られたように思いますので。
とはいえ知っていて読み進めても、十分に胸に迫る話でした。
なぜ一般的な表記でなく、こちらの名で呼ばれているのかについても、作中での理由がきちんとあります。
そしてそこに立ち現れてくるのは……なかなか一言では言い表せませんが、あえて言うなら「人の意志の力」でしょうか。
それぞれの守るべきものを、それぞれの立場で守ろうした人々の、さまざまな形の意志が交錯する様には、良い意味での溜息しか出てきません。
すっきりと爽やかに終わる読後感ではありませんが(少なくとも作者は、ある種のやりきれなさを強く感じました)、それもまた歴史のひとつの姿。
できればタグは見ずに(解読せずに)、お読みになることをお勧めいたします。