3月3日から開催中の「KAC2025」。カクヨムに参加して日の浅い私は、「書き出し指定」や「三題噺」のような縛りがある(つまり一種のマゾヒティックな創作意欲を刺激する)イベントが毎年開催されていることに驚きを禁じ得ませんでしたが、それ以上に驚いたのが本作です。
本作に課せられているお題は、「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」という書き出しで900字以上の作品を書くこと。現代社会が舞台なら、同じ夢を9回も見るというのはユングやフロイトが放っておかないレベルのやべー精神状態ですが、しかし古代や中世を舞台にするなら話は別。夢占いや夢食いなど、夢という精神作用に神秘的な意味を見出していた時代なら、カクヨムのトリ野郎も満足の作品が出来てもおかしくありませんが、本作はまさに「夢」に関する風習が鍵を握っています。
わずか(きっかり)900字の掌編なので、ちょっと触れるだけでもネタバレになってしまいますので詳細は省きますが、タイトルの「安養院」にピンときた方(ヒント:本作の作者である四谷氏は、最近『笹竜胆咲く』という歴史長編を書かれておられます)は、確かにあの人ならこういうことするだろうな、と納得されるはず。そして、その「夢」にまつわる行為がもたらした出会いについても。
その「夢」のエピソードは、『曽我物語』から引用されたとか。歴史の狭間に埋もれたエピソードから想像を膨らませ、一つの作品を仕上げる四谷氏の真骨頂とも言うべき掌編、是非お楽しみください。