概要
石川や 瀬見(せみ)の小川の 清ければ 月も流れを 尋ねてぞすむ
「方丈記」で知られる鴨長明は、歌合せの場で「瀬見の小川」という言葉を用いる。うつくしさのあまり、月が瀬を見に来る川、という意で、鴨川のことを言う。ところがそれは、鴨長明の家――下鴨神社に伝わる言葉で、門外不出とされた言葉だった。下鴨神社の神職で、長明を敵視する鴨祐兼は、神社の神聖を汚すおこないであると非難する。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!「いろいろ嫌がらせされるので、山奥で無常観あふれるスローライフします」
今回、四谷氏の挑んだ三題噺のお題は「雨」「口」「理由」。最近は「このお題で何を書こうか」と考えるよりも、「このお題で四谷氏は何を書くのか」を考えることの方が多くなっていますが、公開前日に予告された今回の題材は「鴨長明」の和歌でした。これを予想できた人は、神を名乗っていいと思います。
その題材の歌、「石川や……」の意味は、
「石も清らのせみの小川 賀茂川よ/あまりの水の清らかさに
神のみか 月までも/川の流れをたずねて住むのだ
澄みわたる蝉の小川 この月よ」
とのこと。(大岡信『古今集・新古今集』より)
「澄む」と「住む」を重ねて、賀茂川の清流を「月も賀茂神社の祭神も住む澄んだ場所」…続きを読む - ★★★ Excellent!!!門外不出の禁句を入れて勝負を挑む鴨長明。果たして名句は世に出るのか?
四谷軒さんらしい、趣深く、美しい、流れるような作品でした。まさに瀬見の小川。
このお話を読む前に、一通り、鴨長明のことを調べたんですが、何度も出世にチャレンジして、ことごとく失敗して、最後は出家して隠遁、という人だったみたいですね。世渡りが下手なのか、どこか変なところがあったのか。最後は、下賀茂神社と関係ない、鎌倉の源の歌の先生に推挙されて行ったのに、先方で断られるという赤っ恥。一体なにがあったんでしょうか。と思わされました。
四谷軒さんが書いておられるように、歌のためには、対立も厭わないような、強い人間性や信念が敬遠されたのかも知れません
たった1600字ですが、心に残る佳作…続きを読む