「幻想 雪」を含む小説

もう、二十年も前に書いたお話です。 推理小説と呼ぶにはかなり問題があります。 瀬戸内にある架空の都市・光花市の南部・素土で起きたひとつの殺人事件に、主人公のキョウとその仲間たちが…

　大正時代――百貨店を経営する富豪の息子・雅次(まさつぐ)。雪がちらつくある日、不慮の事故で魂の片割れのような双子の妹を亡くし、敬愛する兄の眼からは光が失われた。空いた穴を埋めよ…

散歩の途中で公園のベンチに腰掛けると、視界には人目を引く家が建っていた。ここにどんな人が暮らしているのだろう。愛犬ユミトのリードを短めに持ち、朱鞠（しゅまり）はその家の前に佇んで…

　昼頃まで降っていた雪はもう止んでいて、くっきりと丸く形を成す月明かりが地表を覆う雪面を照らしていた。きょうは綺麗な雪月夜ができあがっていたわけだが、その幻想的な光景はどこか僕に…

いつものように、夕飯の準備をしてお母さんの帰宅を待とうとしていた女の子は、未曾有の悪天候で雪の世界へと姿を変えた街に出なければならなくなります。 ※無断転載禁止

　一目見ればどこかの聯隊の軍人であるかのように見えるSは、こう見えても二十半ばの官吏である。　 　妻のI子と共に幸せに暮らしていたSだが、とある事情によって家へと帰る足取りは鉛の…

女彫り師の処にふらりと訪れたのは、白い娘だった……。 ゆきのまち幻想文学賞が31回で終わりを迎え、行き場のない寂寥感から書き上げた小説です。本当ならば32回目の賞へ挑戦したかっ…

桜居宏則は３年前に亡くなった友人の墓参りのためバイクを走らせていた。しかしその途中で事故に遭い川に転落して濁流に飲み込まれてしまう。どうにか川岸にたどり着いたものの辺りには家もな…

　空から雪が舞い散る夜に、私はあなたと出会った。 　17歳だった私は、あなたにお願いをしたよね。 　「私の、お兄ちゃんになって欲しい」と。 　これは、壮大な実験だった。 　絶…

あの日、色見草の合間に真っ白な鷺を見た。 うっすらと雪を纏ったその鳥が、北の空へ飛んでいく。 私の目の前には、我が子の枯れたような屍体が横たわっている。 死と冬枯れは白鷺の姿…

秀子の兄の清作が、年の暮れに帰ってきた。孤独な日々を送っていた秀子は、数年振りの兄との再会に、いたく喜ぶ。 今夜だけは共にいられると兄は言い、二人は語らうが……。 ――――――…

春、彼女は二十回目の死を遂げる。

第３１回ゆきのまち幻想文学賞落選作品。 「ゆきのまち幻想文学賞」は、雪の持つ幻想性をテーマにした作品（原稿用紙１０枚以内）を公募しています。 直接的な雪の描写が全くなくても、「…

この夏だけは、そのまま終わってしまう、と思っていた。実際、夏の終わりの一日が来るまでは、どこまでも、何もない夏休みが地続きの秋を誘っていた。 去年の夏頃に、「８月３１日の夜」と…

雪降りの日。男が迷い込んだ山の中に、粗末な小屋で酒を飲ませる女がいた。男は魅入られたようにイノシシの臓物を食べ、酒を飲み続ける。 ※「夜を拾いに」第1話「冬ごもり」（2018/4…

ラブコメ風恋愛青春物語！ 寿命を取り引きする喫茶店幻想堂の息子、時羽金成（ときわかねなり）は、友達がほしいが友達がいない。しかし、目つきが悪く時羽が人を寄せ付けないバリアを作るか…

　永遠に雪が降り続ける幻想的な町、アイオライト。 　この小さな町には、『三つの掟』があった。 　一つ、夜に鐘が鳴ったら家から出てはいけない。 　一つ、町外れの鐘塔に近づいては…

2031年，在第三次世界大戰(公元2018年)時被核爆重建的地球上（幻曆2031年），各原屬國領域下的國家重建起了生物化學研究行業。 而隨著生化行…

涼香のベッドの飾り棚には、尾びれを美しく翻した透明な金魚の標本瓶が置かれていた。彼女は生物学者である父と二人暮らしだった。六つの頃に母の連れ子としてこの家に来たが、母はまもなくガ…