ゆきのまち
灯色ひろ
第1話 幻想の町、アイオライト
永遠に雪が降り続ける小さな町、『アイオライト』。
煌びやかな町灯りが美しい、平和な場所。
この町には、『三つの掟』があった。
一つ、夜に鐘が鳴ったら家から出てはいけない。
一つ、町外れの鐘塔に近づいてはいけない。
一つ、絶対に町の外へ出てはいけない。
町で暮らす少年レネルは、その掟をいつも不満に思っていた。
「二つ目までは別にいいんだ。でもさ、町の外に出ちゃいけないなんておかしいよ」
「これは大切なルールなんだよ。ルールを守っていれば、レネルは幸せに暮らせるの。だからわかってほしいな。ね?」
「スフレさんの言うとおりよレネル。子どもみたいなワガママ言わない!」
姉のスフレは優しくレネルを諭し、幼なじみのカレンは呆れたように叱る。
レネル以外の人々は、誰も掟に疑問を抱かない。そういうものだからと皆が納得しており、レネルにはそれが不思議だった――。
やがて15の誕生日を迎えたレネルは、この退屈な日常から抜け出し、広い外の世界で冒険をする夢を語る。そのために、道具屋の高級な『冒険者セット』を買うためにお小遣いを貯めていた。
優しい姉のスフレだけがその夢を応援してくれたが、幼なじみのカレン、悪友のルド、泣き虫の後輩リーリカを始め、ほとんどの町人は外の世界に出ることを反対した。ここが一番平和で良いところなのだと。
しかし、反対こそがレネルの好奇心を高める。何よりもレネルは、顔も知らない両親の代わりにたった一人で自分を育ててくれた姉のスフレに、広い大地や大きな海を見せてあげたいと思っていた。
――そんなある日。町の“外”から一人の冒険者が訪れ、町は騒然とした。
平和だった町で、突然人々が『二つの派閥』に分かれて何やら言い争いを始めた。
その理由はレネルにはわからない。それよりもレネルは、外の人と話をしてみたかった。しかし町長たちに止められ、決して会わせてはもらえない。
「……なら、勝手に会ってやる!」
レネルはついに掟を破り、鐘の鳴った深夜にこっそりと家を出て町の門まで出向いた――。
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