雪の日、彫り師の女性の前に現れた不思議な女性。姐さんと同じものを彫ってと乞われ、その美しい背中に彼女は火の鳥を産み出す…
毎回思いますが一花さんにしか描けない世界。どこから発想したのかと思っているうちにいつしか物語の内側に入り込み、自分も息を殺して彼女たちの様子を見つめているのです。緊張感と寂寥感。彼女が彫ったのはただの絵柄ではなく彼女が背負ってきたものすべて。自ら彫ったものを見るのは自分自身を見ているのと同じ。
読み終えて一花さんもまた彫るように、痛みを堪えながら物語を描いているのだとふと気づきます。一作書くごとに何かが解き放たれ苹果を残し消えていく。でもまだ一花さんには背負うもの、描くべきもの、描きたいものがあると思います。読者としてはそれがいつまでも無くならないことを願ってしまいます。